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この作品は2005年のななせの誕生日のお祝いに「無定期便」の義朝さまから頂きました。
らぶらぶな観巴を頂戴してしまい関西方面には足を向けて寝られません。心の友というのは有り難いものですね(笑)感謝!



***

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ピピピ、ピピ……

 目覚し時計のアラームが時を告げるとほぼ同時に巴の手が伸びてスイッチを切る。
 普段ならば布団と睡魔の誘惑としばし葛藤するのだが、今日はそんなこともない。
 即座に起き上がると、机の上に置いてある携帯をチェックする。

 着信・メール、共になし。

 無情なまでに通常どおりの待ち受けを表示する携帯画面を眺めて、巴はガックリと肩を落とす。

 その後も着替え、洗顔、朝食、と何か行動を起こすたびにメール問い合わせを行なうが、目当てのメールは、こない。
 メールの着信音がなるたびに期待に胸を躍らせつつ、携帯を開くのだが、一番欲しい人からのメールは、結局巴が寮を出るまで受け取る事は出来なかった。
 ただでさえ今日はメールが多いので自然タメイキをつく回数も多くなろうというものだ。

 そう、今日は巴の誕生日である。

 普段から顔の広い巴なので今現在通っていルドルフの友人や先輩はもちろん、三月まで通っていた青学のチームメイトや先輩、はたまた他校の選手からもお祝いのメールが来る。
 それはそれでとてもうれしい。

 なのに。
 たった一人、観月からのお祝いがまだもらえていないだけで、とても寂しい気分になる。


 ワガママ、かな、これって。


 朝食後、ついに痺れを切らした巴は自分から電話をかけた。
 幸い、今日は休日である。

 観月さん、私の誕生日、覚えてくれてるよね。
 期待と不安が織り交ぜになった状態で、あわただしく番号を押す。

『はい』
「観月さんですか?
 私、巴です。
 あの、今日って……」
『練習ですか?
 いいですよ、お付き合いします。
 では女子寮の入り口までお迎えにあがりますから』

 切れた電話を耳に当てたまま、しばし巴は呆然とする。
 忘れられてる。
 いや、ひょっとしたら私の誕生日なんで観月さんのデータに初めから入ってないのかもしれない。


 一瞬、ショックで目の前が真っ暗になったが
 観月が迎えにくるので、おとなしく練習に向かう準備をする。

 そう、考え方を変えればいいんだ。
 誕生日に大好きな人と一緒にいられるんだし。
 それだけで充分じゃない。
 ……………………はぁ。

 こんなことなら一月くらい前からアピールしておけば良かったかなあ。
 でもそれってプレゼント要求してるみたいで嫌なカンジだよねぇ。
 プレゼントなんてなくても、観月さんに『おめでとう』って言って貰えるだけでいいんだけど。


 後悔ばっかり。
 最悪の誕生日。


 そんなことを思いながら玄関口に向かうと、既に観月が到着して巴を待っているのが視界に入る。
 青学にいた頃はお互い遠いので直接スクールで待ち合わせをするしかなかったが、今は大概こうして迎えに来てくれる。
 一度くらいは巴が高校の男子寮の方へ迎えに行ってみたいのだが、それは何故か観月に頑強に抵抗されているのでまだ実行したことはない。

 しょぼくれた顔をしていたら、観月にヘンに思われる。
 観月に気落ちを気取られないように笑顔を作って声をかける。

「おはようございます、観月さん」
「おはようございます、巴くん。
 14歳の誕生日、おめでとうございます」

 にっこりと笑顔で観月が言葉を返す。
 一瞬後、巴は口を半開きにしたままで固まった。

「……どうかしましたか? 巴くん。
 キミの誕生日は確か今日だったと記憶していましたが」
「いえ、あの……観月さん、私の誕生日覚えていてくれたんですね」

 こちらも予想外の言葉だったのだろう。
 観月が若干ムッとした表情を見せる。

「なんですか、巴くん。
 キミはボクがキミの誕生日をすっかり忘れているような人間だと…そう思っていたわけですか?」
「だ、だって、観月さん、お祝いメールもくれなかったですし、電話した時にもなにも言ってくれなかったから……」
 狼狽しつつも反論する巴、ため息をつく観月。

「……大事な言葉はメールや電話口などではなく、直接伝えたいと思っていますからね。
 まさかそんな誤解を受けているとは心外でしたが……
 じゃあ、誕生日を忘れているような薄情な人間からは誕生日プレゼントも受け取れませんか」

 ちらりと鞄から出した小さい包みを振ってみせる。
 慌てた巴は引き留めようとその腕を取る。
 確かにプレゼントよりもお祝いの言葉がもらえればいいとは思ったが、観月が自分のために用意してくれた贈り物はそれはそれで欲しい。

「あーっ! 観月さん、ごめんなさい!
 私が悪かったです。プレゼント欲しいです~!」

 初めから冗談のつもりだった観月はいかにも必死といった様子の巴に苦笑を浮かべながらその包みを彼女に手渡す。
 中身は、ペンダントだった。
 小さな、小指も通らないほど小さな指輪がペンダントトップにあしらわれている。

「うわぁ…ありがとうございます、観月さん!
 大事にします! 肌身はなさず身に付けておきます!」
「肌身はなさず身に付けていたら校則違反で没収されますよ。
 しかし、そこまで喜んでもらえると却って恐縮ですね。
 あまり高価な品でもないので」
「何言ってるんですか、観月さん!
 観月さんからもらったものなんだから、値段なんて関係ないですよ。
 朝から今日は観月さんに忘れられてるのかな、ってドキドキしてたからなおさらうれしいです」

 全開の笑顔でそんなことを言う。
 もし、ここが人目のないところだったら、観月の理性が危なかったかもしれない。

「そこまで不安にさせてしまっていたのは、申し訳ありませんね。 
 お詫びというわけではないですが、そのペンダント。
 宣言どおり大切に持っていてくれれば……」



 そこで一旦言葉を区切ると、観月はにこりと巴に微笑みかける。



「四年後には、本物の指輪と取り替えることをお約束しますよ」

「え……っ!?」





 前言撤回。

 今日は、今までで一番の誕生日。
 まだ、午前中も終わってないけど、これは絶対。

――― HAPPY BIRTHDAY!! ―――
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