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さすがに部活内恋愛はまずいだろう。
それが、部長と後輩という立場であれば余計に。
少し苦い表情で私に告げるのは、恋愛はプレイスタイルよろしく粘り強いくせに妙にストイックな先輩だった。
自分たちが想い合う仲だと部内では知らない人はいないのに、それをこの人と来たらまだ知らないみたいで。
だから、校内では公では目も合わせない、必要最低限の二人でいようなんて、本来なら馬鹿馬鹿しいことこの上ないんだけれども。
誰よりも真面目で優しい(と、私は思ってる。なんて盲目的!)海堂薫という男の人は、本当に本当にすまなさそうな表情で「本来ならお前が俺の隣にいるとい うことを、皆に言って回りたいところなんだが」などと、珍しく甘いくどき文句を言うものだから、知らないうちに私の首は縦に振られていた。
『もし、二人きりで逢いたくなったらここで逢おう、帰りも出来るだけ待ち合わせをしよう』
そうして、それからは体育館裏は私たちの秘密基地になったのだ。

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さすがに部活内恋愛はまずいだろう。
そう言うと、普段はとにかく前向きで明るい彼女が目の前で明らかに萎れていった。
そんな顔をさせたいわけではないのに。
あくまで、部活内校内での立場をおもんばかってだな——そう慌てて弁解を続ける自分に驚いた。
きっと、本当は皆知っているのだろうと自分だってわかっていた。二人が、その、つきあっているということは。
桃城などは明らかに揶揄することがあり、荒井や林は自分たちに気を遣っていた。
でも自分はそんな器用な男ではない。公私を分けなければどうなるかもわかったものじゃない。
手塚先輩たちから預かった青学テニス部という襷はそのときの俺にはとても重いものだったのだ。
それは、彼女にも伝わっている。
けれども何か言わなければ——そう言う思いにとりつかれて口にした言葉は、「本来ならお前が俺の隣にいるということを、皆に言って回りたいところなんだが」ということだった。
その気持ちに偽りはない。
彼女はとにかく社交的で可愛い(と、俺は思っている。決して身びいきではなく)のだから、周囲の男という男に牽制したい気持ちでいっぱいなのだ。
単純に赤月が隣にいてくれる奇跡を皆に触れ回りたいだけかもしれなかったけれど。
その気持ちはいまも変わりない。
とにかく、その言葉を聞いて萎れていた花が生気を取り戻すのを見て、アウトだと思った打球がインだったときよりもホッとした。
そして、それでもやはり必死だったのだろう。
「もし、二人きりで逢いたくなったらここで逢おう、帰りも出来るだけ待ち合わせをしよう」そう約束を取り付けていた。
ぶんぶんと音が聞こえそうなくらいうなずく彼女を見て満足を覚えたのは仕方のないことだ。
そうして、それからは体育館裏は俺たちの秘密基地になったのだ。
もし、二人きりで逢いたくなったらここで逢おう——「もし」なんて仮定も必要なく、逢いたくない時など一瞬たりともない二人がここに集まってしまうことは必然ともいえるだろう。



END

お題「School-Candy」、お題配布元紫龍堂
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