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本文なし
*赤い花2
更衣室を出ると既に跡部は待っていた。
着替えとなるとどうしても女性の方が時間がかかってしまうもので
巴が遅れてしまうことも仕方のないことなのだが
跡部相手となると仕方ないといっていられない。
普段待つことに慣れていない彼を待たせてしまうことは
非常に勇気の要る行為である。
そこで巴も謝罪の言葉を口にしつつ、彼に近寄っていく。
「跡部さん、お待たせしてしまって申し訳ありません~」
跡部の目に飛び込んできたのは、普段見ることのないもの。
よく焼けた露出の多い肌に白い布地。
そこに咲き誇る赤いプルメリア。
色鮮やかな絵画が目に飛び込んできたような感覚を覚えた。
もっとも、実際はプルメリア柄の白の水着を着た巴の姿なのだが。
「……おまえ……」
そこまで声を出しかけて跡部は黙ってしまう。
あまりにも巴の姿が意外だったためだ。
普段から、彼女の服のセンスはなかなかイケてるとは思っていた。
なので水着姿もさぞかし…という思いも少しはあった。
しかし、まさか中学生で、しばらくまで田舎者同然だった彼女が
品の良いデザインで、しかもビキニで来るとは思わなかった。
たしかに色黒で体の鍛え上げられた彼女には白地のビキニはよく似合っている。
ホルターネックのトップは、彼女の上半身を危なげなく包んでいるし
布地多めのパンツもすらりとした足を強調しているようだ。
当然ながらよく似合っている。
彼女の肢体のせいだけではなく、跡部の存在も当然大きいのだが
周囲の海水客の視線は並んで立っている二人に注がれている。
男女関係なく。
「どうかしました?」
巴が不思議そうな表情で跡部を見ている。
彼女は周囲の視線に気づいていない。
通りすがりのカップルが痴話げんかを始めたが
原因はよもや自分にあるとは思っていないらしい。
巴が不思議な表情を続ける一方、跡部は不快な表情に変わっていく。
「…チッ、仕方ねえなあ」
跡部はガシッと、巴の左腕を掴みずるずると引きずっていく。
プレイヤーとして右手は触らないというのが跡部らしいところだ。
「ど、どこへいくんですか!?」
あわてて巴が問う。
跡部の歩いていく方向は水際とは真逆。
段々と海岸から遠ざかっていく。
「黙ってろ」
跡部は空いている片手でなにやら電話をしつつ説明なしに歩き続ける。
ついに、水着姿のまま道路まで出てきてしまっていた。
巴が「え?」と思う間に
先ほどまで乗っていた跡部の車がするすると近寄ってきた。
「あのー?」
「乗れ」
二人で乗り込むと車は再び音もなく動き始める。
跡部は少し不機嫌な表情のままだ。
しばらくお互い無言のまま乗っていると、とあるビーチの前で車が止まる。
周囲に人気がないところを見ると海水浴場ではないようだ。
海岸には、よくアジアのリゾートで見るような水上コテージが何棟か建っている。
「━━━ついたぞ、巴」
跡部が言うが早いか、早々に車から降りる。
巴も慌ててそれに続くように降りた。
「あの?ここは一体?」
「跡部家のプライベートビーチだ。
やっぱり一般の海水浴場は落ち着かないからな、ここがいい」
「そうですか」
庶民の巴には一般の海水浴場が落ち着かないとは思わないのだが
そもそも、跡部の人生の軸自体が自分と全く違うところにあることは知っていたので
あえて、そこのところは流す。
彼と価値観について討議をしたところで交わるところは一生無いだろう。
やっぱり、跡部と海水浴場は合うことはないよね。
ただそう思うだけだ。
「はー、しかし誰もいないですね…って当然ですか」
「分かり切ったことを聞くな、バカが」
「はーい、じゃあ、早速泳いでも良いですか?」
巴は海で泳いだ経験が少なかったので浮かれている。
全身でうきうきしたオーラを出しつつ水際へと向かう。
ひらひらと舞うように走る巴の白い水着に丁度陽の光が反射し跡部の目は眩む。
「チッ…バカはこの俺の方か」
まさか、自分が周囲の目を気にして、周囲の目に嫉妬して
ここまで連れてきたとは言えるはずがない。
今日は普通の海水浴場で適当に泳いで楽しめればそれで良いはずだった。
これまで自分自身のことに関して言えば
周囲の目など気にしたことはない。
その視線の先にあるものは憧憬だったり尊敬だったりそんなものばかりだったからだ。
しかし、隣に誰かがいるだけで、
これまでうっとおしく感じるものだとは思わなかった。
自分への視線なら気にならない。
隣の誰か━━━それは巴のみに限られる事だが、
彼女への視線がこんなに気になるものだったとは。
見られただけでなにかが減る訳でもない。
彼女が他の誰かへと興味の対象が変わるとも思えない。
自惚れではなく、自分以上の誰かが存在しうると思えないからだ。
けれども━━━。
じわじわと真綿で首を絞められるような焦燥感。
いらだち。
これを世間一般の言葉で言えば。
「独占欲、ってやつか?これが?……ハッ」
こんな感情を期せずして味わってしまったのは…。
「巴がいるから…か」
誰にも聞こえぬよう低くうなるように呟く。
3へ
*赤い花2
更衣室を出ると既に跡部は待っていた。
着替えとなるとどうしても女性の方が時間がかかってしまうもので
巴が遅れてしまうことも仕方のないことなのだが
跡部相手となると仕方ないといっていられない。
普段待つことに慣れていない彼を待たせてしまうことは
非常に勇気の要る行為である。
そこで巴も謝罪の言葉を口にしつつ、彼に近寄っていく。
「跡部さん、お待たせしてしまって申し訳ありません~」
跡部の目に飛び込んできたのは、普段見ることのないもの。
よく焼けた露出の多い肌に白い布地。
そこに咲き誇る赤いプルメリア。
色鮮やかな絵画が目に飛び込んできたような感覚を覚えた。
もっとも、実際はプルメリア柄の白の水着を着た巴の姿なのだが。
「……おまえ……」
そこまで声を出しかけて跡部は黙ってしまう。
あまりにも巴の姿が意外だったためだ。
普段から、彼女の服のセンスはなかなかイケてるとは思っていた。
なので水着姿もさぞかし…という思いも少しはあった。
しかし、まさか中学生で、しばらくまで田舎者同然だった彼女が
品の良いデザインで、しかもビキニで来るとは思わなかった。
たしかに色黒で体の鍛え上げられた彼女には白地のビキニはよく似合っている。
ホルターネックのトップは、彼女の上半身を危なげなく包んでいるし
布地多めのパンツもすらりとした足を強調しているようだ。
当然ながらよく似合っている。
彼女の肢体のせいだけではなく、跡部の存在も当然大きいのだが
周囲の海水客の視線は並んで立っている二人に注がれている。
男女関係なく。
「どうかしました?」
巴が不思議そうな表情で跡部を見ている。
彼女は周囲の視線に気づいていない。
通りすがりのカップルが痴話げんかを始めたが
原因はよもや自分にあるとは思っていないらしい。
巴が不思議な表情を続ける一方、跡部は不快な表情に変わっていく。
「…チッ、仕方ねえなあ」
跡部はガシッと、巴の左腕を掴みずるずると引きずっていく。
プレイヤーとして右手は触らないというのが跡部らしいところだ。
「ど、どこへいくんですか!?」
あわてて巴が問う。
跡部の歩いていく方向は水際とは真逆。
段々と海岸から遠ざかっていく。
「黙ってろ」
跡部は空いている片手でなにやら電話をしつつ説明なしに歩き続ける。
ついに、水着姿のまま道路まで出てきてしまっていた。
巴が「え?」と思う間に
先ほどまで乗っていた跡部の車がするすると近寄ってきた。
「あのー?」
「乗れ」
二人で乗り込むと車は再び音もなく動き始める。
跡部は少し不機嫌な表情のままだ。
しばらくお互い無言のまま乗っていると、とあるビーチの前で車が止まる。
周囲に人気がないところを見ると海水浴場ではないようだ。
海岸には、よくアジアのリゾートで見るような水上コテージが何棟か建っている。
「━━━ついたぞ、巴」
跡部が言うが早いか、早々に車から降りる。
巴も慌ててそれに続くように降りた。
「あの?ここは一体?」
「跡部家のプライベートビーチだ。
やっぱり一般の海水浴場は落ち着かないからな、ここがいい」
「そうですか」
庶民の巴には一般の海水浴場が落ち着かないとは思わないのだが
そもそも、跡部の人生の軸自体が自分と全く違うところにあることは知っていたので
あえて、そこのところは流す。
彼と価値観について討議をしたところで交わるところは一生無いだろう。
やっぱり、跡部と海水浴場は合うことはないよね。
ただそう思うだけだ。
「はー、しかし誰もいないですね…って当然ですか」
「分かり切ったことを聞くな、バカが」
「はーい、じゃあ、早速泳いでも良いですか?」
巴は海で泳いだ経験が少なかったので浮かれている。
全身でうきうきしたオーラを出しつつ水際へと向かう。
ひらひらと舞うように走る巴の白い水着に丁度陽の光が反射し跡部の目は眩む。
「チッ…バカはこの俺の方か」
まさか、自分が周囲の目を気にして、周囲の目に嫉妬して
ここまで連れてきたとは言えるはずがない。
今日は普通の海水浴場で適当に泳いで楽しめればそれで良いはずだった。
これまで自分自身のことに関して言えば
周囲の目など気にしたことはない。
その視線の先にあるものは憧憬だったり尊敬だったりそんなものばかりだったからだ。
しかし、隣に誰かがいるだけで、
これまでうっとおしく感じるものだとは思わなかった。
自分への視線なら気にならない。
隣の誰か━━━それは巴のみに限られる事だが、
彼女への視線がこんなに気になるものだったとは。
見られただけでなにかが減る訳でもない。
彼女が他の誰かへと興味の対象が変わるとも思えない。
自惚れではなく、自分以上の誰かが存在しうると思えないからだ。
けれども━━━。
じわじわと真綿で首を絞められるような焦燥感。
いらだち。
これを世間一般の言葉で言えば。
「独占欲、ってやつか?これが?……ハッ」
こんな感情を期せずして味わってしまったのは…。
「巴がいるから…か」
誰にも聞こえぬよう低くうなるように呟く。
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