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最初に謝っておきます。かなり小ネタですみません。
未来設定の観月×巴です。
全く色気がない話ですが、まあそういう表現が無いとも言い切れず。
とりあえず何を出されてもおいしくいただける方のみご覧ください。
***
観月はじめは、しばらく前までは風呂など身体を清潔に保ち、温浴効果で身体をくつろげるためだけの場所だと思っていた。
一人で瞑想したり、音楽を聴いたり、リラックスできる場所であって欲しくもあったのだが、残念ながら中高と寮生活では望めないことだった。
だから観月は一人暮らしを始めることでまず非常に重きを置いたことは入浴の楽しめる物件探しだった。
ユニットバスなどとんでもないことだ。最低でも、バストイレ別が良かったし、風呂場が清潔で大きいものであればあるほど良かった。
ただし都会の独身者向けアパートやマンションで、風呂にこだわった物件など平均的な家賃では見つかる訳も無く、ようやく理想的だと思った物件は相場よりも値の張ったデザイナーズマンションだった。
バスタブは広く、17歳を過ぎて急激に成長した身体を沈めても余りある位だったし、浴室の上部に設置されている明かり取りの窓のおかげで浴室内は開放的な印象だった。
この物件を手に入れた結果、実家からの援助額がいくらか嵩むところが観月には少し不本意であったが、いつかあの北国に帰り、それ以降は外へと出られなくなってしまうことを考えると、今はこれくらいの見返りがあってもいいような気もしている。
それに──彼女も付いて来たことだし?
いま自分が後ろから抱きかかえる形になっている人物の赤々と火照る肩に顔を埋めた。
「キミはずいぶん長風呂が得意なんですね、……ボクはもうそろそろ逆上せそうですよ」
「観月さんそんなところでモゴモゴとしゃべられると、くすぐったいです」
自分の前に身を置いた赤月巴は自ら持ち込んだお風呂用おもちゃをプカプカと浮かべて遊んでいた。
観月が風呂にこだわって、そこについてきた結果の一つだった。
心地の良い入浴空間は、風呂好きの女子的には当然興味をそそられる対象となる訳で、それが倦怠期もなんのそのと長い間付き合ってきた恋人の部屋であるならば、たどり着くところは一つしか無いも同然だった。
最初は一緒に入ることもためらっていた彼女だが、生来おおっぴらで無頓着な性格はここにも影響を及ぼした。
つまりはすぐに気にならなくなった。
恋人にテニスで鍛えられた体躯を曝すこと自体、もともと抵抗は無かったし、風呂ごときで何を今更といったこともある。
そうしたら気づけばいつの間にやら昼間っから広い風呂に浸かって、なにもせず二人グダグダと時を過ごすことも多くなっていた。
巴がいま遊んでいる風呂用おもちゃも、彼女が自分の入浴のお供にとわざわざ持ち込んだものだった。
風呂どころか、部屋全体がもしかしたら観月の私物よりも彼女の私物の方が多いのではないかと思われる。
かつて世間一般において思春期と呼ばれる頃には、自分の領域に赤の他人が入ってくることを激しく嫌っていた観月であったが、この頃は巴に限定して言うならばそれも悪くないと思っていた。
きちんと整理整頓さえされていれば、ではあったが。
しかしながら巴がきっちり片付けるということはあまり無いことで、それが近頃の観月の頭痛の種の一つであった。
「出したら片付ける!」と彼女に注意することは、中学生の時分からいつまで経っても変わらなかった。
恋人関係であれば師弟関係などそろそろ解消したい関係の一つではあるが、その時はなかなか訪れそうにない。
しばらく巴の肩に顔を埋めていた観月は、ふたたび顔を上げて彼女の肩越しにおもちゃを見た。目が合ったような気がした。
それはビニール製の黄色のアヒルの浮きだった。
アヒルの地球に優しくなさそうな毒々しいまでの黄色に顔を顰めた。
このおもちゃはなぜか観月を不快にさせる。
すぐさま原因に考えが至って、それがまた更に嫌な感じだった。
「──ボクはキミの私物自体にいちいち文句を付ける気はないんです……片付けられていれば、ですが……」
観月は自分でも何を言い出すのやらと思いつつ、少し言いづらそうに言葉を紡ぐ。
こんなことを言うのは非常に馬鹿馬鹿しい。
まだ学生の身の上とはいえ、成人男性の言うことではない気がする。
しかし、ここで言わなければ、いまふと覚えた不快感をいつまでも拭い去ることはできないだろう。
「ただ、このおもちゃは不快ですからもう持ち込むのはやめてくださいね」
目の前の彼女は「ええー、気に入ってるのに」と抗議したが、観月は彼の本来嫌いとする頭の弱そうな理由でそれを拒む。
「だって、それ、どこかのアヒル似の人間に見えるじゃないですか──それが、ここにあるのは覗かれているようで気持ち悪い」
そう言って観月は巴の脇から手を伸ばしておもちゃを掴み、浴槽の外へと投げ捨てた。
「ああっ、観月さんヒドイ」
巴が抗議すべく、背後の観月へと身体ごと振り返って正面から向き合う体勢になる。
「もうっあれは柳沢さんじゃなくて単なるアヒルですよ──きゃっ」
向き合って、巴が口を開いた瞬間、今度は真っ正面から観月は彼女を抱え込んで身体の中に自らの身を沈めた。
ざばっと浴槽から激しく水がこぼれたが二人は気にしなかった。
湯が減れば自動的に補給されるシステムはこういうときにありがたい。
観月はいきおい彼女の肌に唇を押し当てたまま、先ほどのようにモゴモゴと話し始めた。
「だから、たとえおもちゃであっても、誰かの、何かの目の前にキミの素肌を触れさせたくないし、だいたいボクはそんな状況でキミに色々とするような性癖は無いんですよ、わかってくれませんか」
「──っだからあれは柳沢さんなんかじゃないですってば!」そう言う巴の言葉を、「こんなところでヤツの名前は聞きたくないですね」などと的外れな台詞で流しながら巴の身体に更に浸る。
ここまで動ける広い風呂はやはり悪くないなと、悪怯れるふうも無く観月は自分の選んだ物件に満足を覚え、二人の入浴に没頭することにした。
END
未来設定の観月×巴です。
全く色気がない話ですが、まあそういう表現が無いとも言い切れず。
とりあえず何を出されてもおいしくいただける方のみご覧ください。
***
観月はじめは、しばらく前までは風呂など身体を清潔に保ち、温浴効果で身体をくつろげるためだけの場所だと思っていた。
一人で瞑想したり、音楽を聴いたり、リラックスできる場所であって欲しくもあったのだが、残念ながら中高と寮生活では望めないことだった。
だから観月は一人暮らしを始めることでまず非常に重きを置いたことは入浴の楽しめる物件探しだった。
ユニットバスなどとんでもないことだ。最低でも、バストイレ別が良かったし、風呂場が清潔で大きいものであればあるほど良かった。
ただし都会の独身者向けアパートやマンションで、風呂にこだわった物件など平均的な家賃では見つかる訳も無く、ようやく理想的だと思った物件は相場よりも値の張ったデザイナーズマンションだった。
バスタブは広く、17歳を過ぎて急激に成長した身体を沈めても余りある位だったし、浴室の上部に設置されている明かり取りの窓のおかげで浴室内は開放的な印象だった。
この物件を手に入れた結果、実家からの援助額がいくらか嵩むところが観月には少し不本意であったが、いつかあの北国に帰り、それ以降は外へと出られなくなってしまうことを考えると、今はこれくらいの見返りがあってもいいような気もしている。
それに──彼女も付いて来たことだし?
いま自分が後ろから抱きかかえる形になっている人物の赤々と火照る肩に顔を埋めた。
「キミはずいぶん長風呂が得意なんですね、……ボクはもうそろそろ逆上せそうですよ」
「観月さんそんなところでモゴモゴとしゃべられると、くすぐったいです」
自分の前に身を置いた赤月巴は自ら持ち込んだお風呂用おもちゃをプカプカと浮かべて遊んでいた。
観月が風呂にこだわって、そこについてきた結果の一つだった。
心地の良い入浴空間は、風呂好きの女子的には当然興味をそそられる対象となる訳で、それが倦怠期もなんのそのと長い間付き合ってきた恋人の部屋であるならば、たどり着くところは一つしか無いも同然だった。
最初は一緒に入ることもためらっていた彼女だが、生来おおっぴらで無頓着な性格はここにも影響を及ぼした。
つまりはすぐに気にならなくなった。
恋人にテニスで鍛えられた体躯を曝すこと自体、もともと抵抗は無かったし、風呂ごときで何を今更といったこともある。
そうしたら気づけばいつの間にやら昼間っから広い風呂に浸かって、なにもせず二人グダグダと時を過ごすことも多くなっていた。
巴がいま遊んでいる風呂用おもちゃも、彼女が自分の入浴のお供にとわざわざ持ち込んだものだった。
風呂どころか、部屋全体がもしかしたら観月の私物よりも彼女の私物の方が多いのではないかと思われる。
かつて世間一般において思春期と呼ばれる頃には、自分の領域に赤の他人が入ってくることを激しく嫌っていた観月であったが、この頃は巴に限定して言うならばそれも悪くないと思っていた。
きちんと整理整頓さえされていれば、ではあったが。
しかしながら巴がきっちり片付けるということはあまり無いことで、それが近頃の観月の頭痛の種の一つであった。
「出したら片付ける!」と彼女に注意することは、中学生の時分からいつまで経っても変わらなかった。
恋人関係であれば師弟関係などそろそろ解消したい関係の一つではあるが、その時はなかなか訪れそうにない。
しばらく巴の肩に顔を埋めていた観月は、ふたたび顔を上げて彼女の肩越しにおもちゃを見た。目が合ったような気がした。
それはビニール製の黄色のアヒルの浮きだった。
アヒルの地球に優しくなさそうな毒々しいまでの黄色に顔を顰めた。
このおもちゃはなぜか観月を不快にさせる。
すぐさま原因に考えが至って、それがまた更に嫌な感じだった。
「──ボクはキミの私物自体にいちいち文句を付ける気はないんです……片付けられていれば、ですが……」
観月は自分でも何を言い出すのやらと思いつつ、少し言いづらそうに言葉を紡ぐ。
こんなことを言うのは非常に馬鹿馬鹿しい。
まだ学生の身の上とはいえ、成人男性の言うことではない気がする。
しかし、ここで言わなければ、いまふと覚えた不快感をいつまでも拭い去ることはできないだろう。
「ただ、このおもちゃは不快ですからもう持ち込むのはやめてくださいね」
目の前の彼女は「ええー、気に入ってるのに」と抗議したが、観月は彼の本来嫌いとする頭の弱そうな理由でそれを拒む。
「だって、それ、どこかのアヒル似の人間に見えるじゃないですか──それが、ここにあるのは覗かれているようで気持ち悪い」
そう言って観月は巴の脇から手を伸ばしておもちゃを掴み、浴槽の外へと投げ捨てた。
「ああっ、観月さんヒドイ」
巴が抗議すべく、背後の観月へと身体ごと振り返って正面から向き合う体勢になる。
「もうっあれは柳沢さんじゃなくて単なるアヒルですよ──きゃっ」
向き合って、巴が口を開いた瞬間、今度は真っ正面から観月は彼女を抱え込んで身体の中に自らの身を沈めた。
ざばっと浴槽から激しく水がこぼれたが二人は気にしなかった。
湯が減れば自動的に補給されるシステムはこういうときにありがたい。
観月はいきおい彼女の肌に唇を押し当てたまま、先ほどのようにモゴモゴと話し始めた。
「だから、たとえおもちゃであっても、誰かの、何かの目の前にキミの素肌を触れさせたくないし、だいたいボクはそんな状況でキミに色々とするような性癖は無いんですよ、わかってくれませんか」
「──っだからあれは柳沢さんなんかじゃないですってば!」そう言う巴の言葉を、「こんなところでヤツの名前は聞きたくないですね」などと的外れな台詞で流しながら巴の身体に更に浸る。
ここまで動ける広い風呂はやはり悪くないなと、悪怯れるふうも無く観月は自分の選んだ物件に満足を覚え、二人の入浴に没頭することにした。
END
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