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本文なし
「━━━いいでしょう、私が子守歌代わりだというのなら期待に応えましょう」
*ピロウ・トーク
夜な夜な耳元で囁かれる甘い声。
貴方は私の為だけに言葉を紡ぐ。
もうやめて。
貴方のその声は私には甘い毒。
もうやめて。
これ以上は私が耐えられそうにないから。
貴方が私の夜を浸食したのは新月の夜だったのにいまでは望月。
月が狂わせるのか、貴方の口から紡がれる言葉はことさらハードで。
貴方の言葉だけに打ちのめされる私。
貴方の口から紡ぎ出るは私専用の必殺の武器。
あのとき貴方は「子守歌代わり」と言ったけれども
こんな気持ちにさせられて眠れるわけが無いじゃない。
「……あっ……もう……っ、いやぁっ」
「んふっ、そろそろ巴くんは私に言わなければならないことがあると思いますけどね」
「あ、あります」
「さあ、いってごらんなさい?期待に応えて欲しいのならば」
「お願いです……」
「どんなお願いですか?」
「もう……やめてください」
「なにを?貴女の口からききたいんですよ?」
耳元で響く甘い声。そして含み笑う声。イジワル。
観月さんの声は好き。
だけど。
だけど。
「あやまりますから、夜な夜な寝る前に数式唱える為だけに電話するの止めてくださいっ!」
「おや?巴くん、キミが望んだことですよ」
耳元に当てられたケータイから聞こえてくるは楽しそうな観月の声。
確実に巴の反応を楽しんでいる。
きっかけは半月前。
期末テストに備えた小テストで壊滅的な点数を取ってしまった巴は
観月の元へとやってきた。もちろん個人授業だ。
口では蔑んだことを言う割に嬉しそうに観月は巴へ数学を教え始めた。
しばらくは巴も良い生徒役を楽しんでいたのだが、
しかしそこは苦手な教科。
気づくと深い眠りに落ちていた。
観月は真剣に巴に数学を教えているつもりだった。
彼女の自分への好意をも利用してどんどん伸ばすつもりでいた。
父親と同じくスポーツドクターになりたいという彼女は
数学以外の教科の成績は非常に良い。
しかし、理数系の成績が芳しくなければ医学関係の大学へ進めるわけもなく。
そして進学できたとしても授業についていけるわけもなく。
そこまで考えての個人授業のつもりであったが
彼女が授業についていくつもりが無いのならどうしようもない。
「━━━いいでしょう、私が子守歌代わりだというのなら期待に応えましょう」
わずかにはらんだ怒気に気づいて巴ははっと身を起こす。
観月はいつもの表情だ。
怒っている様子はない。
と、いっても、笑顔でキツイ事も嘘も平気で言う男だ。
真意はわからない。
どんな期待に応えてくれるというのかはわからないが
そのまま何もなかったように授業は続き、
そしてその日の授業の過程は終了した。
その夜、観月から電話がかかってきた。
「さあ、キミの期待に応えましょうか」
一体それはどういうことですか、と尋ねる暇も与えず観月は朗読を始めた。
教科書を。
参考書を。
ずっと数式の時もあった。
それは約1時間読み上げられ、寮の消灯とともに終了する。
半月間。休むことなく。
早川などは着信拒否ればいいじゃないとは言うが
流石に巴も拒否はしなかった。
先日寝てしまったことへの意趣返しと言うこともわかっているし、
あの観月が毎日自分のために時間を割いていると言うことも嬉しい。
しかし、そろそろ自分が限界に達していることも同時にわかっていた。
多分観月も気づいてはいたのだろう。
「んふっ、そろそろ巴くんは私に言わなければならないことがあると思いますけどね」
「あやまりますから、夜な夜な寝る前に数式唱える為だけに電話するの止めてくださいっ!」
本当は違う。
止めて欲しいのではない。
いや、どうせ電話してくれるのならばもっと楽しいこと、
━━━たとえばその日あったこととかデートのお誘いとか、がいいけれど。
そして、彼に告げなければいけないのは謝罪の言葉ではなくて感謝の言葉。恥ずかしくて上手くは言えないけれど。
例え数学のことばかりでも観月の甘い声が自分の耳元で囁かれる。
もったいなくて聞き逃すことは出来なかった。
一言一句。
そう。
気づいたら身体の中に染みついていた。
そして今日は1学期期末考査、数学のテストだった。
「この問題は観月さんがこう解説していた…」
「あのときああ言っていた…」
気づくと苦労なく問題をこなしていた。
そのとき、観月が意図していたことを明確に気づいてしまった。
「おや?巴くん、キミが望んだことですよ」
そう、私が望んだことなのかもしれない。
観月さんの声は聴きたかったらこれまで止めようと思わなかったから。
「そうです。私が態度で観月さんは子守歌だと言ったようなモノですから。
━━━でも、もういいんです。もう、わかりましたから」
「わかった?なにをですか?」
「観月さんの私に対する想いです」
「キキキキ、キミは何を言ってるんですか!たた単に意趣返しですよ!アレは!」
電話の向こうで観月の動揺する声が聞こえる。
「それでも、いいんです」
「はい?」
「ああ、あとどうせ、子守歌されるなら、
毎晩直接耳元で囁いて頂いた方が私のやる気も出ると思うんですが、どうでしょう?」
ゴン。
がたがた。
電話が落ちて転がる音がする。
そして静寂。
「き、期末考査がおわったら夏休みですからね。
……それまでに考えておきましょう」
だけど、本気でやっぱり数式唱えていたらどうしよう。
ちょっと巴の心には不安がよぎったのだった。
END
「━━━いいでしょう、私が子守歌代わりだというのなら期待に応えましょう」
*ピロウ・トーク
夜な夜な耳元で囁かれる甘い声。
貴方は私の為だけに言葉を紡ぐ。
もうやめて。
貴方のその声は私には甘い毒。
もうやめて。
これ以上は私が耐えられそうにないから。
貴方が私の夜を浸食したのは新月の夜だったのにいまでは望月。
月が狂わせるのか、貴方の口から紡がれる言葉はことさらハードで。
貴方の言葉だけに打ちのめされる私。
貴方の口から紡ぎ出るは私専用の必殺の武器。
あのとき貴方は「子守歌代わり」と言ったけれども
こんな気持ちにさせられて眠れるわけが無いじゃない。
「……あっ……もう……っ、いやぁっ」
「んふっ、そろそろ巴くんは私に言わなければならないことがあると思いますけどね」
「あ、あります」
「さあ、いってごらんなさい?期待に応えて欲しいのならば」
「お願いです……」
「どんなお願いですか?」
「もう……やめてください」
「なにを?貴女の口からききたいんですよ?」
耳元で響く甘い声。そして含み笑う声。イジワル。
観月さんの声は好き。
だけど。
だけど。
「あやまりますから、夜な夜な寝る前に数式唱える為だけに電話するの止めてくださいっ!」
「おや?巴くん、キミが望んだことですよ」
耳元に当てられたケータイから聞こえてくるは楽しそうな観月の声。
確実に巴の反応を楽しんでいる。
きっかけは半月前。
期末テストに備えた小テストで壊滅的な点数を取ってしまった巴は
観月の元へとやってきた。もちろん個人授業だ。
口では蔑んだことを言う割に嬉しそうに観月は巴へ数学を教え始めた。
しばらくは巴も良い生徒役を楽しんでいたのだが、
しかしそこは苦手な教科。
気づくと深い眠りに落ちていた。
観月は真剣に巴に数学を教えているつもりだった。
彼女の自分への好意をも利用してどんどん伸ばすつもりでいた。
父親と同じくスポーツドクターになりたいという彼女は
数学以外の教科の成績は非常に良い。
しかし、理数系の成績が芳しくなければ医学関係の大学へ進めるわけもなく。
そして進学できたとしても授業についていけるわけもなく。
そこまで考えての個人授業のつもりであったが
彼女が授業についていくつもりが無いのならどうしようもない。
「━━━いいでしょう、私が子守歌代わりだというのなら期待に応えましょう」
わずかにはらんだ怒気に気づいて巴ははっと身を起こす。
観月はいつもの表情だ。
怒っている様子はない。
と、いっても、笑顔でキツイ事も嘘も平気で言う男だ。
真意はわからない。
どんな期待に応えてくれるというのかはわからないが
そのまま何もなかったように授業は続き、
そしてその日の授業の過程は終了した。
その夜、観月から電話がかかってきた。
「さあ、キミの期待に応えましょうか」
一体それはどういうことですか、と尋ねる暇も与えず観月は朗読を始めた。
教科書を。
参考書を。
ずっと数式の時もあった。
それは約1時間読み上げられ、寮の消灯とともに終了する。
半月間。休むことなく。
早川などは着信拒否ればいいじゃないとは言うが
流石に巴も拒否はしなかった。
先日寝てしまったことへの意趣返しと言うこともわかっているし、
あの観月が毎日自分のために時間を割いていると言うことも嬉しい。
しかし、そろそろ自分が限界に達していることも同時にわかっていた。
多分観月も気づいてはいたのだろう。
「んふっ、そろそろ巴くんは私に言わなければならないことがあると思いますけどね」
「あやまりますから、夜な夜な寝る前に数式唱える為だけに電話するの止めてくださいっ!」
本当は違う。
止めて欲しいのではない。
いや、どうせ電話してくれるのならばもっと楽しいこと、
━━━たとえばその日あったこととかデートのお誘いとか、がいいけれど。
そして、彼に告げなければいけないのは謝罪の言葉ではなくて感謝の言葉。恥ずかしくて上手くは言えないけれど。
例え数学のことばかりでも観月の甘い声が自分の耳元で囁かれる。
もったいなくて聞き逃すことは出来なかった。
一言一句。
そう。
気づいたら身体の中に染みついていた。
そして今日は1学期期末考査、数学のテストだった。
「この問題は観月さんがこう解説していた…」
「あのときああ言っていた…」
気づくと苦労なく問題をこなしていた。
そのとき、観月が意図していたことを明確に気づいてしまった。
「おや?巴くん、キミが望んだことですよ」
そう、私が望んだことなのかもしれない。
観月さんの声は聴きたかったらこれまで止めようと思わなかったから。
「そうです。私が態度で観月さんは子守歌だと言ったようなモノですから。
━━━でも、もういいんです。もう、わかりましたから」
「わかった?なにをですか?」
「観月さんの私に対する想いです」
「キキキキ、キミは何を言ってるんですか!たた単に意趣返しですよ!アレは!」
電話の向こうで観月の動揺する声が聞こえる。
「それでも、いいんです」
「はい?」
「ああ、あとどうせ、子守歌されるなら、
毎晩直接耳元で囁いて頂いた方が私のやる気も出ると思うんですが、どうでしょう?」
ゴン。
がたがた。
電話が落ちて転がる音がする。
そして静寂。
「き、期末考査がおわったら夏休みですからね。
……それまでに考えておきましょう」
だけど、本気でやっぱり数式唱えていたらどうしよう。
ちょっと巴の心には不安がよぎったのだった。
END
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