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本文なし
━━━おや?
気付かないウチに眠ってしまったんですか。
全く仕方のない人ですね。
*おはよう
観月はPCから予測試合データを弾き出す手を止め、
隣りで気持ち良さそうに寝ている娘を眺めた。
その寝顔には少し疲労の色が見える。
それもそうだろう、何せJr選抜合宿の終盤だ。
日々ハードな特訓を施されている。
どんな体力自慢の選手であっても疲れは隠せなくなってきている。
当然体力自慢ではない観月も、疲労の色が濃くなっている。
もともと体力自体有り余るほうではないし
選手の肉体としても細身で小柄な方だ。
彼が選抜されたのもひとえにその卓越した頭脳による所が大きい。
もっとも頭脳が目立っているだけで
技術にしても基礎能力にしても他の選手にひけを取らないものだが。
だが、疲れていても彼は他人にみせるようなことはしない。
他人に対して弱みを見せることはしない。
逆に平然としてみせることで周囲に与える精神的な物を考慮している。
皆が疲れ切っていて、この休憩時間も睡眠に当てる選手が多い中
平気な顔をして普段と変わりない見せることは相手に脅威を感じさせることだ
実際、今観月に脅威を覚える者も少なくないだろう。
巴に対してもそうだ。例え彼女しか見ていなくても平気を装う。
隣ですやすや眠る彼女はとても気持ちが良さそうで、
目が覚めたら、疲労は消え去っているのだろうとは思うけれど、
彼女の隣で一緒にまどろむことは幸せなことかもしれないけれど、
自分もそれに従って眠る気にはとてもなれない。
すでに自分が完璧な人間ではないことは巴も知っている。
けれども、少しでも自分が完璧な人間に映るように努力はしたい。
疲れていても平気な顔をして安心させたい。
寝ている自分を見つけて「観月さんも疲れてるんだな」なんて
不安感を抱かせてはならない。
彼女が目を覚ました時には平然としている自分を見て欲しい。
そして、まだあどけなさの残る彼女の寝姿を眺めていたいという欲もある。
なんの夢を見ているのかころころと表情を変える彼女を見逃すのは惜しいし、
立てる寝息すら愛おしい。
それに、僕が寝てしまったら
誰かが巴くんの寝姿を無遠慮に見てしまうかもしれませんしね。
彼女のこんな姿を眺めていても良いのは自分だけですから。
データを取らずとも想定だけでもライバルは沢山いる。
隙を与えてはいけない。
これが独占欲と呼ばれ、誰かにあざ笑われても構わない。
「……くしゅっ」
やれやれ、こんなところで眠ってしまうと本当に風邪を引いてしまいますよ。
それに女性の身体は冷やしてはいけないように出来ているというのに…。
寒さのせいか、一つくしゃみをして少し堅く縮こまった彼女の身体を見て
観月は自分の身につけていたジャージを掛けてやる。
実際のところは自分だって寒いのだけれど
彼女が風邪を引いて苦しむよりは、自分が苦しんだ方が何倍もマシだから。
だから寒くても平然と、引き続きPCに向かって作業を続けた。
もっとも、北国生まれの自分には寒さも我慢できる程度だったというのもあるが。
寒さでうっすら覚め始めた意識の中、急に暖かさに包まれる。
あれ?さっきまでなんだか寒かったはずなのに━━━。
心地よい、身体に馴染んだ暖かさ。
それになぜか観月さんの匂いもする。
観月さんにぎゅってされたらこんなカンジなのかなあ?
なんだかよく分からないけれど、幸せな気分になって
巴は再び眠りの国に帰っていった。
休憩時間もあと半分を過ぎ、休憩していた選手達も動き始めた。
そのざわめきで巴は現実世界に引き戻された。
「あれ?観月さん…」
寝てしまうちょっと前と何ら変わらず作業をしている観月が目に入る。
変わっているのは彼の服装。ジャージを着ていない。半袖のウェアだ。
それもその筈だ。自分の肩にかけられているのだから。
「ああ、巴くん、起きてしまったんですか?
あと20分ぐらいあります。この時間はもう最後まで寝ていてください」
目を開いて一番最初に映るものが
小言を言わない優しい観月さんだなんて幸せだなあとぼんやり思う。
思ってなんだか顔がにやけてきた。
「えへへー…」
「どうしたんです。起きて急に笑い出すなんて」
気持ちの悪い、と言外に含めて眉をひそめて観月があきらかに不審そうに問う。
このちょっと突き放したカンジの観月さんもイイよねー。
などと、巴に思われていることなどつゆ知らず。
「なんだか、観月さんって、カッコイイなって思いまして。
だって、隣でずっと起きていてくれて安心して眠っちゃいましたし、
ジャージもあったかかったですし」
「……そ、そうですか?」
「はい。だから余りにも幸せで笑っちゃったんです」
にっこり笑って巴はそう言った。
━━━よかった、彼女の目には自分の狙い通りの自分が映っているようですね。
彼女の目に浮かぶのは自分に対する安心感、信頼。
いつだって彼女の目に映りたいと思っていた自分の姿がそこにある。
「んふっ」
「観月さんこそ、どうしたんですか?私、何か変なこと言いましたか?」
急に笑い出す観月を不思議そうに見る巴。
「いいえ━━━何も。ただ、僕こそ幸せで」
ああ、でも、と引き続き言葉を紡ぐ。普段滅多に見ないような幸福そうな笑顔で。
「これからはうたた寝する時は必ず僕の隣でだけと約束してください。
目覚めて最初に見るのも僕、君が寒さで凍えないようにするのも、
悪い視線から護るのも僕。……いいですね?」
END
━━━おや?
気付かないウチに眠ってしまったんですか。
全く仕方のない人ですね。
*おはよう
観月はPCから予測試合データを弾き出す手を止め、
隣りで気持ち良さそうに寝ている娘を眺めた。
その寝顔には少し疲労の色が見える。
それもそうだろう、何せJr選抜合宿の終盤だ。
日々ハードな特訓を施されている。
どんな体力自慢の選手であっても疲れは隠せなくなってきている。
当然体力自慢ではない観月も、疲労の色が濃くなっている。
もともと体力自体有り余るほうではないし
選手の肉体としても細身で小柄な方だ。
彼が選抜されたのもひとえにその卓越した頭脳による所が大きい。
もっとも頭脳が目立っているだけで
技術にしても基礎能力にしても他の選手にひけを取らないものだが。
だが、疲れていても彼は他人にみせるようなことはしない。
他人に対して弱みを見せることはしない。
逆に平然としてみせることで周囲に与える精神的な物を考慮している。
皆が疲れ切っていて、この休憩時間も睡眠に当てる選手が多い中
平気な顔をして普段と変わりない見せることは相手に脅威を感じさせることだ
実際、今観月に脅威を覚える者も少なくないだろう。
巴に対してもそうだ。例え彼女しか見ていなくても平気を装う。
隣ですやすや眠る彼女はとても気持ちが良さそうで、
目が覚めたら、疲労は消え去っているのだろうとは思うけれど、
彼女の隣で一緒にまどろむことは幸せなことかもしれないけれど、
自分もそれに従って眠る気にはとてもなれない。
すでに自分が完璧な人間ではないことは巴も知っている。
けれども、少しでも自分が完璧な人間に映るように努力はしたい。
疲れていても平気な顔をして安心させたい。
寝ている自分を見つけて「観月さんも疲れてるんだな」なんて
不安感を抱かせてはならない。
彼女が目を覚ました時には平然としている自分を見て欲しい。
そして、まだあどけなさの残る彼女の寝姿を眺めていたいという欲もある。
なんの夢を見ているのかころころと表情を変える彼女を見逃すのは惜しいし、
立てる寝息すら愛おしい。
それに、僕が寝てしまったら
誰かが巴くんの寝姿を無遠慮に見てしまうかもしれませんしね。
彼女のこんな姿を眺めていても良いのは自分だけですから。
データを取らずとも想定だけでもライバルは沢山いる。
隙を与えてはいけない。
これが独占欲と呼ばれ、誰かにあざ笑われても構わない。
「……くしゅっ」
やれやれ、こんなところで眠ってしまうと本当に風邪を引いてしまいますよ。
それに女性の身体は冷やしてはいけないように出来ているというのに…。
寒さのせいか、一つくしゃみをして少し堅く縮こまった彼女の身体を見て
観月は自分の身につけていたジャージを掛けてやる。
実際のところは自分だって寒いのだけれど
彼女が風邪を引いて苦しむよりは、自分が苦しんだ方が何倍もマシだから。
だから寒くても平然と、引き続きPCに向かって作業を続けた。
もっとも、北国生まれの自分には寒さも我慢できる程度だったというのもあるが。
寒さでうっすら覚め始めた意識の中、急に暖かさに包まれる。
あれ?さっきまでなんだか寒かったはずなのに━━━。
心地よい、身体に馴染んだ暖かさ。
それになぜか観月さんの匂いもする。
観月さんにぎゅってされたらこんなカンジなのかなあ?
なんだかよく分からないけれど、幸せな気分になって
巴は再び眠りの国に帰っていった。
休憩時間もあと半分を過ぎ、休憩していた選手達も動き始めた。
そのざわめきで巴は現実世界に引き戻された。
「あれ?観月さん…」
寝てしまうちょっと前と何ら変わらず作業をしている観月が目に入る。
変わっているのは彼の服装。ジャージを着ていない。半袖のウェアだ。
それもその筈だ。自分の肩にかけられているのだから。
「ああ、巴くん、起きてしまったんですか?
あと20分ぐらいあります。この時間はもう最後まで寝ていてください」
目を開いて一番最初に映るものが
小言を言わない優しい観月さんだなんて幸せだなあとぼんやり思う。
思ってなんだか顔がにやけてきた。
「えへへー…」
「どうしたんです。起きて急に笑い出すなんて」
気持ちの悪い、と言外に含めて眉をひそめて観月があきらかに不審そうに問う。
このちょっと突き放したカンジの観月さんもイイよねー。
などと、巴に思われていることなどつゆ知らず。
「なんだか、観月さんって、カッコイイなって思いまして。
だって、隣でずっと起きていてくれて安心して眠っちゃいましたし、
ジャージもあったかかったですし」
「……そ、そうですか?」
「はい。だから余りにも幸せで笑っちゃったんです」
にっこり笑って巴はそう言った。
━━━よかった、彼女の目には自分の狙い通りの自分が映っているようですね。
彼女の目に浮かぶのは自分に対する安心感、信頼。
いつだって彼女の目に映りたいと思っていた自分の姿がそこにある。
「んふっ」
「観月さんこそ、どうしたんですか?私、何か変なこと言いましたか?」
急に笑い出す観月を不思議そうに見る巴。
「いいえ━━━何も。ただ、僕こそ幸せで」
ああ、でも、と引き続き言葉を紡ぐ。普段滅多に見ないような幸福そうな笑顔で。
「これからはうたた寝する時は必ず僕の隣でだけと約束してください。
目覚めて最初に見るのも僕、君が寒さで凍えないようにするのも、
悪い視線から護るのも僕。……いいですね?」
END
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