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拍手のお礼で使用したお話です。
宍戸と巴のおでかけ話。





*****

拍手


財布の中身の少ない中高生の出来るデートといえば限られているわけで。
その例に漏れず赤月巴と宍戸亮は街中をぶらぶらと歩いていた。
本屋にCDショップに雑貨屋に…とつまりウィンドウショッピングだ。
他のカップルと違うところは、スポーツ用品店を積極的に覗いているところだろうか。
新しいウェアやラケットなど真剣な眼差しで二人とも吟味している。
もっとも、今現在差し迫って必要なもの以外は買えない。
巴も宍戸も金持ちに囲まれて生活しているが、彼女ら自身は至って庶民的だった。

「はーっ…やっぱり新しいウェアって機能性はいいですけど高いですよねえ。
 熱気が籠もらないジャージが欲しいんですけど…クールなんとかって言う素材の」

素敵な商品を思い出してため息を漏らしながら巴は感想を述べた。
レギュラージャージは学校の顔であり、何着か購入して常にぴしっと清潔を保っているが
それゆえに個人的に使うウェアにまでは手が回らない。

「そうだな、俺もあともう少しジャージがヘタレてれば真剣に考えるけどな」

最新型のジャージを上下揃えれば簡単に数万円が飛んでしまう。
バーゲンはいつだろう…と二人して思いながら店を出る。

「……じゃあ、気を取り直して他のところへ行きましょうよ!」

「そっそうだな」

気を取り直した二人は、駅前のビルのテナントなどを覗いて歩いた。
テナントの中の1軒は輸入雑貨メインのバラエティーショップで二人のお気に入りだ。
今日も変わった雑貨探しに熱中する。

「ほらほら!宍戸さんっ、これこれ」

巴が店の奥で発見したのは色とりどりのシャンプー。
日本ではおおよそ見ないような色と香りのものだった。
彼女は数種類あったそれの香りを一つ一つ確認していく。
バニラやフルーツの香りは日本には無いような香りでつい好奇心をそそられる。
宍戸も巴に継いで一つ一つ確認していく。

「すげー生々しい香りだなあ、これ。ガイジンってスゲーのな」

「ですよねえ。日本って爽やかな香りが多いですもんね、感覚が違うのかなあ。
 ……あっ、これ!チョコレートの香りだ……おいしそう……」

「お前、どこまで食いしん坊なんだよ。食うなよ?」

ついつい、チョコレートの香りにうっとりとした表情を浮かべる巴。
「食べませんよーだ」と宍戸に反論するも、その表情からはかなりあやしい。
コイツ、子ども用歯磨き粉を食べてたタイプだなと宍戸は睨む。

「まあ、食べないにしろ、これ面白そうだし買ってみようかなあ。
 ちょうどシャンプーが切れかかってるんですよね。どの香りがいいかな?」

チョコかメロンかなあ、とぶつぶついいながら、どれにしようか巴は悩む。
シャンプー程度なら巴の財布にもさほど響かない。
たまにはいいかと、商品を吟味する。

「やめとけ、巴」

その巴の様子に半ばあきれ顔で宍戸は止める。

「えーなんでですか?イイ香りじゃないですか」

「お前なあ…そういうお遊びっぽい商品って成分がヤバめなんだよ。
 実際に使うのは髪に悪いぞ。30年後禿げてもしらねえからな」

「ええー、それは困りますよ!……禿げた私でも宍戸さんは見捨てませんよね?」

言葉尻を真剣に捉え、ちょっと泣きそうな顔で宍戸を見上げた。

「……知るか。
 シャンプーが欲しいだけならうちで扱ってるヤツやるからそれ使えよ」

その言葉に巴の顔はぱっと晴れた。
単純なヤツだと思いながら、宍戸も悪い気はしない。
惚れた弱みというかそこを含めて好きになったのだから仕方がない。
「やった、宍戸さんところのシャンプーだ」とはしゃぐ巴を見て呆れるどころか
幸せな気持ちなのだから恋愛って恐いと達観した気持ちになる。

「そういえば、宍戸さんも自分のおうちのシャンプーな訳ですよね?
 ってことは私は宍戸さんちの香りって事になりますね」

「ちょっ…お前っ……ゴホゴホッ」

巴の発言の裏を考えてしまい、宍戸は咳き込んでしまう。
特になにか意図して言ったわけではないけれども
深読みするとなんとなく我ながら照れくさい発言ではあった。

「どうしました?大丈夫ですか?」

そんなことを宍戸が考えているとはつゆ知らず、素直に宍戸を気遣って近寄ってくる。
近くで心配そうに見上げる巴から、グッドタイミングかバッドタイミングか
ちょうどシャンプーの香りが漂ってきた。
当然、今は自宅のシャンプーとは違う香りで。
多分越前家の香りなのだろうかと考えると、あの妙に生意気な少年を思い出しムッとする。
それと同時に少し勝ち誇った気持ちにもなる。

「まあ、もうすぐ俺の香りになるんだよな、お前は」

俺色に染まれなんて、まるで跡部景吾のようなことは言わないけれど。
少しずつ自分と少女の境界線が薄れていくのは幸せなことだと思った。

「え?」

目の前の当の本人は全く分かっていないようだけれども。

「……なんでもねえよ」

そのうち分かる日も来るだろうと思うと楽しくて仕方ない。



END
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