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10周年記念アンケート、回答ありがとうございました。
1位リョーマ×巴です。
まだ微妙なバランス状態の二人のお話です。
***
「あー、あー」巴は喉が少々おかしいことが気になった。ちょっとガサガサしていて腫れた感じだ。
今日は一日空気が乾燥していたからだろうか?
それとも、いつもより多めにかいた汗が冷えて体温を奪っていたからだろうか?
風呂に入って、体もほかほかで喉も湿気で潤したはずなのにおかしいなと、赤月巴は居間でテレビを見ていた倫子と菜々子に話しかけてみた。
「喉? うーん風邪…かしらねえ、念のため喉に効くお薬を出しましょうか」
菜々子は心配そうに眉をひそめて、薬箱を取りにいこうと腰を浮かせたところに、思い出したように倫子の声が上がった。
「そうそう、去年漬けた花梨の蜂蜜漬けがあるわ、それを飲んだら良いんじゃない」
「花梨? 漬けてましたっけ」
不思議そうに菜々子は言うが、「そうよ、そうだった」と倫子は話を続ける。
「巴ちゃんは知ってる? 花梨って喉に良いのよ。蜂蜜もね。だから去年ご近所からいただいたのを漬けたのよ」
やっと役に立つ、ウキウキと倫子は巴にそう話した。
「へえ、そうなんですか! 花梨は知ってますけど、蜂蜜漬けは飲んだ事がないから楽しみ!」
巴は苦い薬よりも確かに良いと、そそくさと席を立ち台所へと向かう。
保存庫を開けると確かに梅酒やぬか漬けなどが並んでいる中に、『かりん』と書かれた瓶が入っていた。
深い琥珀色の花梨の蜂蜜漬けは、木になっている淡い黄色の花梨の実からは想像できない色だったがふたを開けてみると、確かに花梨の甘くさわやかな香りと蜂蜜独特の香りが混ざって漂ってきた。
棚から出してきたレードルでそれをすくうと、蜂蜜漬けの割にはさらっとした感じの液体をコップに流し入れた。
「……蜂蜜漬けってなんだか、お酒っぽい匂いなんだー。実の水分とか発酵するとかそんな感じかな?」
巴はあまり気にすることなく、蜂蜜漬けを大きめのコップに1/3くらい汲み上げて作業を終了させた。
そしてそのコップに水を注いで希釈させ、ようやく蜂蜜漬けは口にすることが出来るようなった。
台所の食卓にちょこんと座ってそれを味わうことにした。
コップの中の液体を眺めてやっぱりちょっと蜂蜜にしては水っぽいなあと巴はややいぶかしく思ったが、そこは初めて口にするものだからそんなものなんだろうなと、警戒心薄めでコップに口をつけた。
口に広がる味は確かに花梨と蜂蜜で甘いが、喉を通すとカッとした熱いものを飲み込むような感じがした。
やっぱり喉がおかしいんだなと巴はすんなり納得した。
「でも、おいしいなー」ぐびぐびと夢中で半分以上飲み干した。
なんだか体が温かくなってきたようだ。顔もほてりだした気がする。
「……薬効かな? それとも、熱が出始めちゃったかなあ」
喉がおかしいとなれば、それが腫れてしまえば簡単に熱も出る。
悪化しないようにこれを飲んだはずだが、ちょっと遅かったのかもしれない。
「──何飲んでるの?」
台所で顔を真っ赤にしながら何かを飲んでいる巴を、不思議そうにリョーマは眺めた。
「あ、おばさんが漬けた花梨だよー。蜂蜜で漬けたんだって、花梨って美味しいねえ」
「へえ、俺も飲んでみようかな」
リョーマもスタスタと台所に入ってきて、巴に近づくとギョッとした表情になり、慌てて保存庫の中を確認する。
顔を真っ赤にした巴の周囲に漂う香りはしょっちゅう自分の父親が漂わせているものと似ている。
もしかして──リョーマはそう思った。
「どうしたのー?」そのリョーマの態度が気になって、巴は彼の行動を窺う。
リョーマはガサガサと保存庫をあさっているようだった。
「あの、クソ親父が」
チッと思わず舌打ちしてしまう。『かりん』と書かれた瓶は確かに一本しか入っていない。
去年、母が蜂蜜漬けを漬けたのだと話していたのは覚えているから、それは確かに『花梨の蜂蜜漬け」だったのだろう、かつては。
しかし、その瓶の隣に置いてある一升瓶を見て頭を抱えたくなった。
導きだされる答えはひとつだ。ノンアルコールの蜂蜜漬けに物足りなかった父親が、母の知らないところで後で酒を足したのだろう。
巴が帯びた酒気がそれを物語っている。
苦々しい顔で瓶を再び保存庫に戻して巴のところまで戻る。
「赤月、お前平気? それ、お酒みたいなんだけど」
「へ? ……って、ええええええー! 確かにちょっとそれっぽいな~とは思ったけど!」
そう思ったなら飲むなよと心でツッコみつつ、リョーマは巴が握ったままのコップを取り上げる。
「結構飲んだ?」
「う~ん、蜂蜜だと思って飲んだから……」
リョーマは巴の口にしたコップを口に付けた。
「あっ!」巴は声を上げる。中身がお酒だとわかったからということもあるし、自分の口にした物をリョーマも口にしているからというのもある。
一緒に住んでいて今更というのはあるけれども、これって間接キスかなあと、ぼんやり思うと急に気恥ずかしくなってきた。
頬がほてっているのはお酒のせいだけではないはずだと、自身は自覚してしまった。
先ほどよりさらに体温上昇させている巴を横目に、リョーマは先ほど口にしたコップの中身をシンクに捨てて、新たに水を入れ直して巴に渡した。
「これ飲んだら部屋に戻りなよ」
水を必死に飲みながら、リョーマの言葉に同意する。
一気飲みに近い早さでコップの中身をすっかり空にして、巴は食卓から立ち上がろうとした。
「あっ……!」がくんと膝が落ちる。なかなか上手く力が入らなかった。
それは則ちお酒の副作用と言うか酔いのためであったが、巴には初めての感覚だったので瞬間恐怖すら感じた。
自分はどうしてしまったのだろう? そう思い、混乱してしまった。
その巴の表情にリョーマはこれは酔ってるんだろうねと理解して、深くため息をついた。
なぜ彼女がこの花梨の蜂蜜漬けを口にすることになったのか、それはリョーマの知るところではなかったけれど、しかし結果は間接的にとはいえ自分の父親がこの状態を引き起こしている。
もちろん巴の不注意にも非はあるけれども、この真っ赤になってふらついている彼女を見ていま責めるべきではないことは明らかで。
とりあえずは自分がこの場を片付けて、彼女をさっさと部屋に返すほか無いだろうと結論づけた。
居間にいる母や菜々子を呼ぶことも考えたけれども、そうなったらひと騒動起きることは容易に想像できてリョーマにしてみればただ騒がしく面倒なことだ。
「ほら、腕、貸しなよ」
「えええ、いきなり何? 意味が分からないし」
巴のはっきりした返答に、とりあえず意識や思考は酔っていても確かなようで、リョーマはホッとした。
「だって、ちゃんと立てないんでしょ」そういって有無も言わさず巴の腕を自分の肩に回してなかば引きずるように台所を出た。
幸いにしてそこから部屋までは誰に会うこともなく進み、巴の部屋まで入ることが出来た。
「ふう、やっと着いた。お前案外重いね──って、おい!」
部屋に着いたとたん巴はズルズルとリョーマの体をたどりながら、くずおれた。
それにつきあうようにリョーマも身を屈め、なんとか巴がどこかに体をぶつけたりすることなくそのまま部屋に横にさせることに成功した。
ただし、気づいたらまるでリョーマが巴に膝枕をさせるような格好になっていた。
「……俺もまだまだだね……」
振り落とそうと思えばいくらでも簡単に出来そうな体勢だ。
なのに出来ないのは、どうしてだろう。やはり、巴に対してだからだろうなとリョーマは思う。
これが桃城や堀尾だったらば遠慮なく投げ出すところだ。同性だから気持ち悪いし、いっそ蹴飛ばしてみたい。
顔をまだ真っ赤に染めながらも、すやすやと眠る巴を眺めおろす。
お酒のせいだろうか、彼女の顔はとても楽しそうだった。かわいいと言っても良いかもしれない。あくまで欲目で、だが。
リョーマ自身はその彼女を振り落とせない理由に気づいていたが、これまでもあえて気づかないようにしていた。
微妙なバランスの上に成り立っている二人の関係を壊しかねないからだ。
軽口のたたける奇妙な同居人、楽しい同級生、頼もしい部活仲間、時には大事にしたいと思う異性──自分の性格ではこれまでこんな関係を築くことはなかった。でも、それは築いてみればとても良いものだった。似たような心地よい関係を青学テニス部全体と築いているけれども、彼らは同性でそしてなにより巴じゃない。いとおしむような気持ちをも抱くのは巴に対してだけで。
だから、もしこれまで築いていたものが崩れてしまうようなことがあったらと思うと、少し怖い。
だから、しばらくはまだ、このままでいい。
けれど──。
「目が覚めたら、どんな顔するんだろうね、赤月は。まあその頃には俺は全身筋肉痛かもしれないけど……ね」
巴の目が覚めないように細心の注意を払って自分の足を楽な体勢に組み替えて、リョーマは彼女の部屋の中央に腰を落ち着けた。
そして彼女の布団を必死で手を伸ばして掴み、相当ぐっすりと眠りに落ちているらしい彼女にかぶせた。
せめて、夜明けまでは、このままでいたい。
彼女が目覚める瞬間まで。二人の関係が変わるかもしれない、その瞬間まで。
たまにはクソ親父に感謝しても良いかもしれないと思いながら、巴の温もりと重さを感じながら、リョーマは朝を待つことにした。
「この貸しはとてつもなく大きいからね、赤月」
END
1位リョーマ×巴です。
まだ微妙なバランス状態の二人のお話です。
***
「あー、あー」巴は喉が少々おかしいことが気になった。ちょっとガサガサしていて腫れた感じだ。
今日は一日空気が乾燥していたからだろうか?
それとも、いつもより多めにかいた汗が冷えて体温を奪っていたからだろうか?
風呂に入って、体もほかほかで喉も湿気で潤したはずなのにおかしいなと、赤月巴は居間でテレビを見ていた倫子と菜々子に話しかけてみた。
「喉? うーん風邪…かしらねえ、念のため喉に効くお薬を出しましょうか」
菜々子は心配そうに眉をひそめて、薬箱を取りにいこうと腰を浮かせたところに、思い出したように倫子の声が上がった。
「そうそう、去年漬けた花梨の蜂蜜漬けがあるわ、それを飲んだら良いんじゃない」
「花梨? 漬けてましたっけ」
不思議そうに菜々子は言うが、「そうよ、そうだった」と倫子は話を続ける。
「巴ちゃんは知ってる? 花梨って喉に良いのよ。蜂蜜もね。だから去年ご近所からいただいたのを漬けたのよ」
やっと役に立つ、ウキウキと倫子は巴にそう話した。
「へえ、そうなんですか! 花梨は知ってますけど、蜂蜜漬けは飲んだ事がないから楽しみ!」
巴は苦い薬よりも確かに良いと、そそくさと席を立ち台所へと向かう。
保存庫を開けると確かに梅酒やぬか漬けなどが並んでいる中に、『かりん』と書かれた瓶が入っていた。
深い琥珀色の花梨の蜂蜜漬けは、木になっている淡い黄色の花梨の実からは想像できない色だったがふたを開けてみると、確かに花梨の甘くさわやかな香りと蜂蜜独特の香りが混ざって漂ってきた。
棚から出してきたレードルでそれをすくうと、蜂蜜漬けの割にはさらっとした感じの液体をコップに流し入れた。
「……蜂蜜漬けってなんだか、お酒っぽい匂いなんだー。実の水分とか発酵するとかそんな感じかな?」
巴はあまり気にすることなく、蜂蜜漬けを大きめのコップに1/3くらい汲み上げて作業を終了させた。
そしてそのコップに水を注いで希釈させ、ようやく蜂蜜漬けは口にすることが出来るようなった。
台所の食卓にちょこんと座ってそれを味わうことにした。
コップの中の液体を眺めてやっぱりちょっと蜂蜜にしては水っぽいなあと巴はややいぶかしく思ったが、そこは初めて口にするものだからそんなものなんだろうなと、警戒心薄めでコップに口をつけた。
口に広がる味は確かに花梨と蜂蜜で甘いが、喉を通すとカッとした熱いものを飲み込むような感じがした。
やっぱり喉がおかしいんだなと巴はすんなり納得した。
「でも、おいしいなー」ぐびぐびと夢中で半分以上飲み干した。
なんだか体が温かくなってきたようだ。顔もほてりだした気がする。
「……薬効かな? それとも、熱が出始めちゃったかなあ」
喉がおかしいとなれば、それが腫れてしまえば簡単に熱も出る。
悪化しないようにこれを飲んだはずだが、ちょっと遅かったのかもしれない。
「──何飲んでるの?」
台所で顔を真っ赤にしながら何かを飲んでいる巴を、不思議そうにリョーマは眺めた。
「あ、おばさんが漬けた花梨だよー。蜂蜜で漬けたんだって、花梨って美味しいねえ」
「へえ、俺も飲んでみようかな」
リョーマもスタスタと台所に入ってきて、巴に近づくとギョッとした表情になり、慌てて保存庫の中を確認する。
顔を真っ赤にした巴の周囲に漂う香りはしょっちゅう自分の父親が漂わせているものと似ている。
もしかして──リョーマはそう思った。
「どうしたのー?」そのリョーマの態度が気になって、巴は彼の行動を窺う。
リョーマはガサガサと保存庫をあさっているようだった。
「あの、クソ親父が」
チッと思わず舌打ちしてしまう。『かりん』と書かれた瓶は確かに一本しか入っていない。
去年、母が蜂蜜漬けを漬けたのだと話していたのは覚えているから、それは確かに『花梨の蜂蜜漬け」だったのだろう、かつては。
しかし、その瓶の隣に置いてある一升瓶を見て頭を抱えたくなった。
導きだされる答えはひとつだ。ノンアルコールの蜂蜜漬けに物足りなかった父親が、母の知らないところで後で酒を足したのだろう。
巴が帯びた酒気がそれを物語っている。
苦々しい顔で瓶を再び保存庫に戻して巴のところまで戻る。
「赤月、お前平気? それ、お酒みたいなんだけど」
「へ? ……って、ええええええー! 確かにちょっとそれっぽいな~とは思ったけど!」
そう思ったなら飲むなよと心でツッコみつつ、リョーマは巴が握ったままのコップを取り上げる。
「結構飲んだ?」
「う~ん、蜂蜜だと思って飲んだから……」
リョーマは巴の口にしたコップを口に付けた。
「あっ!」巴は声を上げる。中身がお酒だとわかったからということもあるし、自分の口にした物をリョーマも口にしているからというのもある。
一緒に住んでいて今更というのはあるけれども、これって間接キスかなあと、ぼんやり思うと急に気恥ずかしくなってきた。
頬がほてっているのはお酒のせいだけではないはずだと、自身は自覚してしまった。
先ほどよりさらに体温上昇させている巴を横目に、リョーマは先ほど口にしたコップの中身をシンクに捨てて、新たに水を入れ直して巴に渡した。
「これ飲んだら部屋に戻りなよ」
水を必死に飲みながら、リョーマの言葉に同意する。
一気飲みに近い早さでコップの中身をすっかり空にして、巴は食卓から立ち上がろうとした。
「あっ……!」がくんと膝が落ちる。なかなか上手く力が入らなかった。
それは則ちお酒の副作用と言うか酔いのためであったが、巴には初めての感覚だったので瞬間恐怖すら感じた。
自分はどうしてしまったのだろう? そう思い、混乱してしまった。
その巴の表情にリョーマはこれは酔ってるんだろうねと理解して、深くため息をついた。
なぜ彼女がこの花梨の蜂蜜漬けを口にすることになったのか、それはリョーマの知るところではなかったけれど、しかし結果は間接的にとはいえ自分の父親がこの状態を引き起こしている。
もちろん巴の不注意にも非はあるけれども、この真っ赤になってふらついている彼女を見ていま責めるべきではないことは明らかで。
とりあえずは自分がこの場を片付けて、彼女をさっさと部屋に返すほか無いだろうと結論づけた。
居間にいる母や菜々子を呼ぶことも考えたけれども、そうなったらひと騒動起きることは容易に想像できてリョーマにしてみればただ騒がしく面倒なことだ。
「ほら、腕、貸しなよ」
「えええ、いきなり何? 意味が分からないし」
巴のはっきりした返答に、とりあえず意識や思考は酔っていても確かなようで、リョーマはホッとした。
「だって、ちゃんと立てないんでしょ」そういって有無も言わさず巴の腕を自分の肩に回してなかば引きずるように台所を出た。
幸いにしてそこから部屋までは誰に会うこともなく進み、巴の部屋まで入ることが出来た。
「ふう、やっと着いた。お前案外重いね──って、おい!」
部屋に着いたとたん巴はズルズルとリョーマの体をたどりながら、くずおれた。
それにつきあうようにリョーマも身を屈め、なんとか巴がどこかに体をぶつけたりすることなくそのまま部屋に横にさせることに成功した。
ただし、気づいたらまるでリョーマが巴に膝枕をさせるような格好になっていた。
「……俺もまだまだだね……」
振り落とそうと思えばいくらでも簡単に出来そうな体勢だ。
なのに出来ないのは、どうしてだろう。やはり、巴に対してだからだろうなとリョーマは思う。
これが桃城や堀尾だったらば遠慮なく投げ出すところだ。同性だから気持ち悪いし、いっそ蹴飛ばしてみたい。
顔をまだ真っ赤に染めながらも、すやすやと眠る巴を眺めおろす。
お酒のせいだろうか、彼女の顔はとても楽しそうだった。かわいいと言っても良いかもしれない。あくまで欲目で、だが。
リョーマ自身はその彼女を振り落とせない理由に気づいていたが、これまでもあえて気づかないようにしていた。
微妙なバランスの上に成り立っている二人の関係を壊しかねないからだ。
軽口のたたける奇妙な同居人、楽しい同級生、頼もしい部活仲間、時には大事にしたいと思う異性──自分の性格ではこれまでこんな関係を築くことはなかった。でも、それは築いてみればとても良いものだった。似たような心地よい関係を青学テニス部全体と築いているけれども、彼らは同性でそしてなにより巴じゃない。いとおしむような気持ちをも抱くのは巴に対してだけで。
だから、もしこれまで築いていたものが崩れてしまうようなことがあったらと思うと、少し怖い。
だから、しばらくはまだ、このままでいい。
けれど──。
「目が覚めたら、どんな顔するんだろうね、赤月は。まあその頃には俺は全身筋肉痛かもしれないけど……ね」
巴の目が覚めないように細心の注意を払って自分の足を楽な体勢に組み替えて、リョーマは彼女の部屋の中央に腰を落ち着けた。
そして彼女の布団を必死で手を伸ばして掴み、相当ぐっすりと眠りに落ちているらしい彼女にかぶせた。
せめて、夜明けまでは、このままでいたい。
彼女が目覚める瞬間まで。二人の関係が変わるかもしれない、その瞬間まで。
たまにはクソ親父に感謝しても良いかもしれないと思いながら、巴の温もりと重さを感じながら、リョーマは朝を待つことにした。
「この貸しはとてつもなく大きいからね、赤月」
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