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勢いに任せて「ダブルスの王子様」とのコラボネタ。
この手のネタが苦手な方はお気をつけ下さい。
ネタバレは無いはず。
ダブプリゲーム開始段階(6/7)の巴はさすがに大会参加できないよね、っていう話です。
***
「いいなー、リョーマくん」
越前家居間にて先ほど跡部の姿が映っていたテレビと、座卓の上に転がっているバッジを前に巴はしきりにリョーマを羨んだ。
「私も、そのダブルスの大会出たかった!」
「あのねえ……赤月。お前テニス歴言ってみなよ」
「二か月」
片手で自らの頭を抱えてリョーマは「バッカじゃないの?」と絞り出すように声を出した。
「全国大会レベルの選手がエントリーされてる大会に、テニス歴二か月でなにをしようっての?」
「それは……」
痛いところを突かれた巴は口ごもる。
確かに、テニスを始めて二か月では何も出来ないだろう。
天性のテニスセンスがあると言ってもようやく試合が形になってきたところで、必殺技の一つも打ち出せないのだ。
そんななかエントリーを認められたって、バッジ欲しさに群がってくるものたちの格好の餌食になるだけで、彼女と一緒に組まされる誰かの迷惑になるだけなのは明白だ。
それは巴でもわかる。それに自分だってパートナーにはそんな迷惑をかけたくはない。
「でも、私も出てみたかったんだもん、学校以外でもリョーマくんとダブルスが組めたら嬉しいなーとか思ったし」
「──なっ」
「……私のパートナーが外で私以外の人とペアになるっていうのは……ちょっと悔しいよ」
巴はその悔しさの意味を突き詰めたことはまだ無かったが、悔しいこと自体は本音だ。
幼い独占欲には巴はまだ気付かない。
その彼女と座卓を少し離れたところで一緒に囲んでいるリョーマは、その言葉を計りかねているのか黙ったまま巴の次の言葉を待っているようだった。
知り合ってから二か月、テニス歴二か月の彼女が一体なにを言い出すのか、リョーマに取っては予測不可能だった。
それだけに彼女の存在がとても興味深いものになっているのは確かだったが。
リョーマが興味深い彼女の言葉にすこし居心地の悪いものを感じていると、巴も部屋の空気がどことなく気まずいものになっていることに気付いたのか慌てて言葉を続けた。
「あ、ゴメン! そんなこと言っても仕方ないよね」
「そっそりゃ……そうでしょ」
お互い取り繕うように会話を再開させる。
「大会に出場できたら、お弁当もって応援に行くから頑張ってね、リョーマくん」
「”できたら”って、できるに決まってるじゃん、そんなの。
だからお弁当も今から考えておくんだね──味付けとか、赤月の料理はまだまだだからさ」
「うん! 頑張るよ」
ここで話は終わりというように、リョーマは立ち上がりリモコンを手に取った。
いつの間にか跡部タイムから通常の番組に切り替わっていたテレビを、プツッと消して部屋に背を向けた。
「ああ、それと──」
「なに?」
一体リョーマになにを言われるのだろう、ドキッとしながら巴はリョーマを見上げた。
「今回はお弁当を頑張ってもらうけど、”次”があったらその時はちゃんと頑張ってもらうから」
「ええっ”次”って」
次とは自分の考えている”次”で良いのだろうか、自分が都合のいいように考えているだけなのだろうかと巴はリョーマの言葉について焦りながら考えてみた。
その表情を振り返って見たリョーマは、ニヤリと楽しそうに口の端で笑んで部屋をそのまま出て行った。
「赤月の働きを期待してるから、せいぜい料理とテニスの腕を上げておきなよ、俺のパートナーさん」
少し離れたところから、トントンと階段を上がる足音と同時にそんな声が聞こえてきた。
「……明日、図書室でお弁当の本とダブルス必勝法の本借りてこなきゃ……」
そんなつぶやきとともに視線を座卓の上に移すと、バッジが転がったままだった。
巴は、リョーマが置き忘れていったそのバッジを慌てて彼に届けようと立ち上がったが、すぐにまたその場に座り込んだ。
「と、とりあえず顔が戻るまでここに居よう」
気付けば顔がなぜかニヤけている。それになんだか暑い。
試合の後でもないのに、巴にはどうやらクールダウンが必要なようだった。
END
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