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跡部家のゴージャスクリスマス?にご招待なお話。





***

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「おい、これを着ろ」

そう言った跡部景吾から手渡されたのは凝った作りの紙袋。
赤月巴は目を丸くしながら袋を開けて中に入った箱を取り出す。

「これ…なんですか?」

クリスマス・イブの夕方に気軽にメールでデパートまで呼び出された巴は
何がなんだかよく分からないまま跡部の前に立っている。
そして手渡されたのが、この紙袋。
話の展開が読めていない。

「『着ろ』って言ってんだろ、この馬鹿が。服だよ」

なぜイキナリ服を手渡されるのだろう?
よく分からないままに、
跡部にフィッティングルームへ促されて行く。



「うわあ…」

箱を開くと上品な白い生地がこぼれ出た。
手に取ると、今まで触ったことがないくらい柔らかで。
思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
確か、これを着ろと跡部は言っていた。
と、言うことは私がこの箱の中のものを身につけろと言うのだろうか。
布地を広げてみるとドレスだった。
白のシフォンをふんだんに使い柔らかい感じのする膝丈のドレス。
デザインは大人すぎず、かといって子供っぽくもない丁度良いものだ。
箱のなかを覗くと、ファーのボレロと靴なども入っていた。
つまり一式。
お値段のことを考えると軽くめまいがする。
しかし、跡部は着ろと言ったのだ。
自我を何とか保ちながら普段着慣れない服を必死に身に纏いはじめた。



緊張の面持ちでフィッティングルームのドアを開ける。
待つのに飽きた表情で跡部は巴を迎えた。

「なかなか似合うじゃねえか」

本気なのか冗談なのか分からないニヤリとした表情で巴に感想を告げる。

「あ、ありがとうございます…って、違いますよ!なんですか、この服は?」

「何だ…って、そりゃいつもお前が着るような服じゃ
跡部家のクリスマスパーティーには参加出来ないだろうが。
もう会場ではウチのテニス部の奴らも来てるみたいだし、早く行くぞ」

ぎゅっ、と巴の手を掴み、スタスタとデパートから跡部は出ていこうとしている。
巴はすっかり混乱した頭ながら必死に状況を整理しよう努力する。
デパートで着替えたと言うことは、このデパートで服を購入したと言うことだ。
跡部の周囲には誰もいない。誰かがいた気配もなかった。
もっとも外に車を待たせていそうなカンジであるが。
と言うことは跡部が一人でこの服を用意してくれたのだろうか。
女性ものの衣装1セット。若い男子が一人で。
謎だ。
巴は疑問はすぐに尋ねる方だった。

「あの…跡部さん、この服は?」

前を向いて歩きながら跡部は答える。

「俺が見立てた。跡部家担当の外商にいろいろ持ってこさせてな。
時間があれば家まで持ってこさせたのだが、なにぶん今日思いついたからな」

今日。
なんて気まぐれな。
でも、何故今日誘おうと思ったのだろうか。
これまでクリスマスのクの字すら出てこなかったのに。

「本当は家主催のパーティーには呼ばずに後日二人でゆっくり過ごそうと思ったんだが
やっぱり特別な日ぐらい、お前をそばに置いておきたくてな」

それで、今日か。
巴はとりあえず納得した。
この服がプレゼントなのか?とか、自分はプレゼントを用意していないとか
そんなことを言う必要はないだろう。
跡部はそんな細かいことは気にしない男なのだから。



デパートの正面口に出ると跡部家所有のリムジンが停まっていた。
いつの間にか勝手知ったるものとなったその車に二人で乗り込む。
車は音もなく発進し、跡部家主催クリスマスパーティーの会場へと向かう。
クリスマスイルミネーションの綺麗な都内の街並みをボンヤリ眺めていると
デパートから手を握ったまま隣に座っていた跡部が不意に口を開いた。

「なあ、男が女に服を贈ることの意味をお前は知っているか?」

「いいえ?」

とんと見当もつかない。
跡部は笑いを含んだ声でこう言った。

「着せた後でそれを脱がせるためだとさ。つまり男は服を贈り女は自分を贈るってことだな」

「あ…ええっ?」

巴はその言葉の意味についてしばし考え、そして思い当たって混乱する。

「お前…俺にクリスマスプレゼントを用意してねえだろ?
都合の良いことに、今日の会場はホテルだしな。丁度良いんじゃねえか?」



END
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