忍者ブログ
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

40000万HIT記念。
感謝の気持ちを込めてアンケート1位のカップリングのフリーSSです。
そのまま保存したり自サイトにアップして頂いて結構です。
ただし、お約束があります(簡単な言葉で言いますよ)。
・登場人物や文章を勝手に変えないこと
・書いた人は「ななせなな」であることを表記すること
・勝手に同人誌など印刷物に使用しないこと
・このページに直接リンクを貼らないこと

この4点は守って下さいね。
最低限のことですが、これが守られてないとさすがにへこみます。





***

拍手


『ma cherie』ななせなな



「ふわぁ、いい天気ですね」

4月に入り桜前線と共に急激に柔らかくなった陽ざしに眠気を誘われ、赤月巴はベンチの隣に腰かける観月はじめの左肩にもたれかかった。
二人に吹き付ける風は昨日から日本列島を覆っている寒気の影響かひんやりとしているが、それが暖かな日の光と相まってスポーツをする者にとって暑すぎず、寒すぎずちょうど良い気候となっていた。
現に目の前のテニスコートの中では休憩中だというのに、聖ルドルフの名ダブルスとも言える二名が楽しげにラリーを続けている。
よほど冬の冷気を四散させた太陽の下で動けることが嬉しいらしい。
観月に言わせれば、単に体力配分を忘れた馬鹿者がはしゃいでいるにすぎないのだが。

「気持ちいい陽射しではありますけど……まだ、屋外で昼寝しないでくださいよ」

観月は隣でぼうっとしている彼女が風邪をひくことを懸念する。
しっかり者で頑張り屋━━━巴に対する世間の評価はそんなカンジだったが、それにしては案外抜けている所も多くてうっかり屋さんでもある。
肌寒い屋外でうたた寝をして風邪をひくのは今に始まったことではなく、観月の懸念も実に的を射たものであった。

「はーい、わかってますよお」

クスクスと笑いながら、観月の左肩に預けていた身体をさらにぎゅうぎゅうと彼に押しつける。
「ほら、こうすればもっとあったかくなりますから」半分寝ぼけたような声で話す。
そうですね、体温だけじゃなくて、心まで暖かくなりますね。
観月はそう思いながらも、そういうキャラではないことを重々自覚しているので言わないことにした。
口に出してしまえば巴は舞い上がるだろうが、周囲にいる邪魔者達の反応が不快だ。
彼女を喜ばせる事が出来るのなら千の言葉も万の言葉も厭わないつもりだが、さすがにいまは場が悪すぎた。
現にこうしてくっついているだけで、「お熱いだーね」と冷やかす声が聞こえるのだから。
とりあえず、冷やかす声はキツイ眼差しでかき消すことにして、
いまは隣にあるぬくもりに集中することにした。
休憩終了まで、あと5分。
それぐらいは彼氏としての恩恵にあずかっても良いはずだ。
例え、練習中であっても。
ズシッ、と不意に巴の重みが増した。
スースーと深く、まるで時計の秒針のように正確に刻む呼気は寝息に違いない。
どうやら本当にうたた寝を始めてしまったらしい。

「巴く━━━」

「観月…さん…?」

彼女を起こそうとしたところ、彼女の口から自分の名前がこぼれ出た。
寝ぼけているのか、それとも本当に寝言なのかは判別付かないが、彼女が自分の名前の次にこぼす言葉が何であるのかが気になって、観月はそのまま彼女を待った。

「……これから…も、ずっと、こうだといいですね……あったかい……」

「ずっと?」

寝言に返事をしてはいけないという話を聞いたことがあるけれど、観月は思わず応えてしまった。
しまったと思いつつも、引き続き彼女の動向を窺った。

「ずっと……いっしょに……いたい…です」

その言葉に思わず自分から笑みが生まれるのを抑えきれない。
多分、チームメイトの悪友達はアレコレ言うのだろうが、先ほど遠慮したことを翻して、やはり言わせておけばいいと思いきる。
『お熱いだーね』そんなことを言われるようなことをついついしたくなってしまう。
それで本当に何か言われるようであれば、しれっと「彼女がいない僻みですか?それとも嫉妬ですか?」そう応えればいい。
彼女の重みを受けているだけだった自分の左腕を、起こしてしまわぬようそっと彼女の肩に回して無防備に崩れていた眠る身体を安定させる。
すこしだけその手に力を入れて、二人の間にはジャージの布地以外存在しないほど密着させて。

「そうですね、ボクもそうありたいですね。
 ━━━これからも、よろしく。ボクの……かわいい人」

この春の柔らかく暖かい陽射しにも負けない、暖かな存在に観月も少しだけ身体を預けて目を閉じた。



END
PR
プロフィール
HN:
ななせなな
性別:
非公開
忍者カウンター
P R
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]