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本文なし
『個人情報保護という名の愛情』
「さて、対戦相手と君のデータを基にして
次の試合をシミュレートしてみましたよ」
観月さんが硬質で白いノートパソコンを前に私を手招きする。
私はそれに導かれて観月さんの肩越しにモニタをのぞいてみる。
数値の羅列。
データの羅列。
モニタに映るデータは正直私にはついていけない部分も多い。
観月さんが丁寧に解説してくれるから、
一見で理解する必要もないんだけどね。
「はぁーそれにしても細かいデータですよね」
「んふっ。それが取り柄ですからね」
「そうですか?他にも取り柄はあると思いますけど…。
それはともかく、やっぱりパソコンに入っているデータは
完璧なんですか?」
よくみると、対戦相手の食べ物の好き嫌いまで入力してある。
どこで入手した情報なんだろう。
身長体重なんかも…ううっ…スリーサイズまで…。
観月さん、ストーカー予備軍…?
たまに、というかいつも、観月さんという人がよくわからない。
私は好きだし、好かれてもいるんだろうけれど。
でも、ちょっと、こわい。
「いいえ、完璧じゃありませんよ」
案外負けず嫌いな観月さんにしては意外な発言だ。
「あなたのデータは必要最低限しか入力されていませんから」
「……?どういうことですか?」
もしかして、私は興味の対象外だったとか?
データを取られているのも本当は微妙だけれど、
でもそれはちょっとショックかも。
「未だにパソコンのセキュリティーは完璧ではありませんからね。
一体どういうところでどんな手段で流出するか
わかったものじゃないですよ」
だから、なに?話がイマイチよめないよ…。
「どんな些細な事でも、
君のデータが流出してしまうなんて許せないんです。
他の人間に、君がどういう人でどんな体型でどんな考え方をするかなんて知られてしまうことを考えると、
恐ろしくてパソコンになんて残せませんよ」
すこし照れたような表情でそう語る。
しかし観月さんがそんなことを考えていたなんて、意外。
少し呆気にとられて聞いている私を置いてけぼりにして話を続ける。
「馬鹿げた独占欲だと笑ってくれても結構ですよ」
ここに来て話がようやく理解できたような気がする。
要するに、私を大事に思ってくれているってことでいいんだよね…?
うれしいけど。うれしいけど……でも……。
「そうやって、私のことを考えてくれているのは嬉しいんですが、
シミュレートしたりするときには
緻密なデータって必要じゃないですか?
私のように必要最低限のデータでいいんなら
他の人のもそれで良いんじゃないんですか?」
私は素人だからそう思うんだろうけど、ちょっと疑問。
果たして趣味まで必要なのかなって思っちゃうのは当然だよね。
「もちろん、データの項目は多いに越したことはありませんよ。
何処で役に立つかわかりませんしね……それに」
「それに…?」
「君の詳細データはシミュレートするたびに
毎回手で打ち込んでいますから大丈夫です。
そして終了するときには保存しませんから
データも流出しないですよ。
……まあ、もっとつっこんだ話しをすると
それも完璧ではありませんけどね」
めずらしくはにかんだ表情でそう答える観月さん。
でも。
手打ち。
私のデータを。
毎回。
趣味も。
身長体重━━━スリーサイズも。
私は、
とてつもなく得体の知れない人に大事にされているんじゃないかと、
あらためて、思った。
END
『個人情報保護という名の愛情』
「さて、対戦相手と君のデータを基にして
次の試合をシミュレートしてみましたよ」
観月さんが硬質で白いノートパソコンを前に私を手招きする。
私はそれに導かれて観月さんの肩越しにモニタをのぞいてみる。
数値の羅列。
データの羅列。
モニタに映るデータは正直私にはついていけない部分も多い。
観月さんが丁寧に解説してくれるから、
一見で理解する必要もないんだけどね。
「はぁーそれにしても細かいデータですよね」
「んふっ。それが取り柄ですからね」
「そうですか?他にも取り柄はあると思いますけど…。
それはともかく、やっぱりパソコンに入っているデータは
完璧なんですか?」
よくみると、対戦相手の食べ物の好き嫌いまで入力してある。
どこで入手した情報なんだろう。
身長体重なんかも…ううっ…スリーサイズまで…。
観月さん、ストーカー予備軍…?
たまに、というかいつも、観月さんという人がよくわからない。
私は好きだし、好かれてもいるんだろうけれど。
でも、ちょっと、こわい。
「いいえ、完璧じゃありませんよ」
案外負けず嫌いな観月さんにしては意外な発言だ。
「あなたのデータは必要最低限しか入力されていませんから」
「……?どういうことですか?」
もしかして、私は興味の対象外だったとか?
データを取られているのも本当は微妙だけれど、
でもそれはちょっとショックかも。
「未だにパソコンのセキュリティーは完璧ではありませんからね。
一体どういうところでどんな手段で流出するか
わかったものじゃないですよ」
だから、なに?話がイマイチよめないよ…。
「どんな些細な事でも、
君のデータが流出してしまうなんて許せないんです。
他の人間に、君がどういう人でどんな体型でどんな考え方をするかなんて知られてしまうことを考えると、
恐ろしくてパソコンになんて残せませんよ」
すこし照れたような表情でそう語る。
しかし観月さんがそんなことを考えていたなんて、意外。
少し呆気にとられて聞いている私を置いてけぼりにして話を続ける。
「馬鹿げた独占欲だと笑ってくれても結構ですよ」
ここに来て話がようやく理解できたような気がする。
要するに、私を大事に思ってくれているってことでいいんだよね…?
うれしいけど。うれしいけど……でも……。
「そうやって、私のことを考えてくれているのは嬉しいんですが、
シミュレートしたりするときには
緻密なデータって必要じゃないですか?
私のように必要最低限のデータでいいんなら
他の人のもそれで良いんじゃないんですか?」
私は素人だからそう思うんだろうけど、ちょっと疑問。
果たして趣味まで必要なのかなって思っちゃうのは当然だよね。
「もちろん、データの項目は多いに越したことはありませんよ。
何処で役に立つかわかりませんしね……それに」
「それに…?」
「君の詳細データはシミュレートするたびに
毎回手で打ち込んでいますから大丈夫です。
そして終了するときには保存しませんから
データも流出しないですよ。
……まあ、もっとつっこんだ話しをすると
それも完璧ではありませんけどね」
めずらしくはにかんだ表情でそう答える観月さん。
でも。
手打ち。
私のデータを。
毎回。
趣味も。
身長体重━━━スリーサイズも。
私は、
とてつもなく得体の知れない人に大事にされているんじゃないかと、
あらためて、思った。
END
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