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本文なし
『リップクリーム』
岐阜の山の中で育った赤月巴でさえも少し音を上げたくなるほどの
寒さと乾燥の中行われた練習は日没で終了となった。
今日は久し振りに巴と観月はテニススクールで練習していた。
本来ならばスクール組の練習も部活の練習も休みだったのだが、
やはり少しでも上達したいと、
申し訳程度に二人で映画を見たあと打ちに来ていた。
流石の寒さで屋外のコートには人が殆どおらず貸し切り状態で
寒ささえ除けばまずまず快適な練習となった。
「あー、もう乾燥して肌はガビガビ喉はガラガラですよ!」
ケホケホと少し咳き込んで、巴はわめく。
練習自体に何ら文句はなくてむしろ楽しいくらいだったが、
やはり天候に関してはついつい文句が出てしまう。
「そうですね、ちょっと今日は酷く乾燥してますからね。
喉も、肌もちゃんとケアした方がイイでしょうね。
うがい薬はちゃんと持ってきてますから、
あとで使いますか?…クリームもあったかな?」
観月はまるで母のようなコメントしながら
巴の肌の乾燥具合を確かめる。
「あっ」
観月はあることに気づいた。
「どうしたんですか?観月さん」
「ちょっとキミの唇も荒れてるようですよ」
観月は巴の唇をなぞりながらそう指摘する。
巴は彼の指の感触に赤面しつつ、鞄の中を探る。
「……あ、わすれた……」
淡い色付きのグロスは入っていたものの、薬用リップがない。
グロスがあるからと忘れてきてしまったようだった。
「仕方ないですね…」
観月は自分のカバンから
チューブ入りのリップクリームを取り出して
自分の指に乗せて巴の唇に直接塗ってやる。
巴は塗り終わるまでじっと観月を見つめて待っている。
かすかに指の触れるその感触はくすぐったいだけじゃなくて
ドキドキする。
「さ、これで良いでしょう」
そんなに時間がかかった訳でもないのに、
長い時間のように感じられ巴はぼーっとしていた。
そして観月の声で呪縛を解かれ、それと同時に巴もまた気づいた。
「あ、観月さんも少し荒れちゃってますね、私が塗ってあげますよ」
「そうですか?ありがとう」
そう言って観月はリップクリームを手渡そうとしたが、
その差し出した手を巴にぐいっと引かれて体勢を崩す。
「……」
巴は自分の唇についたリップクリームを
そのまま観月に移すことにした。
しばらく巴はその作業に没頭する。
最初の一瞬こそ観月も驚いたものの、
巴の腰に手を回して積極的に協力する。
「ところで…ボクは思うんですけどね…」
巴の身体が崩れ落ちそうになるまでクリームを付け合って
身を離すときに観月は呟いた。
「これって、クリームを舐め取りこそすれ
塗り合うことにはならないんじゃないですかね?」
巴は自分のしでかしたことと先ほどの余韻に顔を赤らめながら
観月の言いたい意味に気づく。
なけなしの勇気にツッコミを入れられてはもうどうしようもない。
「あっ…あああそっそうですね…!」
すっかり慌てふためく巴を眺めて、
観月は人の悪い笑みを浮かべる。大胆なことをやっておきながらも
些細なツッコミですっかりうろたえる彼女を
とても可愛いと思いながら。
「なんなら、もう一度“おとなしめ”にやってみましょうか?
今度こそちゃんと付くかもしれませんよ?
━━━もっとも、何度もしていれば
もうクリームもいらないくらい潤うでしょうけどね?」
END
『リップクリーム』
岐阜の山の中で育った赤月巴でさえも少し音を上げたくなるほどの
寒さと乾燥の中行われた練習は日没で終了となった。
今日は久し振りに巴と観月はテニススクールで練習していた。
本来ならばスクール組の練習も部活の練習も休みだったのだが、
やはり少しでも上達したいと、
申し訳程度に二人で映画を見たあと打ちに来ていた。
流石の寒さで屋外のコートには人が殆どおらず貸し切り状態で
寒ささえ除けばまずまず快適な練習となった。
「あー、もう乾燥して肌はガビガビ喉はガラガラですよ!」
ケホケホと少し咳き込んで、巴はわめく。
練習自体に何ら文句はなくてむしろ楽しいくらいだったが、
やはり天候に関してはついつい文句が出てしまう。
「そうですね、ちょっと今日は酷く乾燥してますからね。
喉も、肌もちゃんとケアした方がイイでしょうね。
うがい薬はちゃんと持ってきてますから、
あとで使いますか?…クリームもあったかな?」
観月はまるで母のようなコメントしながら
巴の肌の乾燥具合を確かめる。
「あっ」
観月はあることに気づいた。
「どうしたんですか?観月さん」
「ちょっとキミの唇も荒れてるようですよ」
観月は巴の唇をなぞりながらそう指摘する。
巴は彼の指の感触に赤面しつつ、鞄の中を探る。
「……あ、わすれた……」
淡い色付きのグロスは入っていたものの、薬用リップがない。
グロスがあるからと忘れてきてしまったようだった。
「仕方ないですね…」
観月は自分のカバンから
チューブ入りのリップクリームを取り出して
自分の指に乗せて巴の唇に直接塗ってやる。
巴は塗り終わるまでじっと観月を見つめて待っている。
かすかに指の触れるその感触はくすぐったいだけじゃなくて
ドキドキする。
「さ、これで良いでしょう」
そんなに時間がかかった訳でもないのに、
長い時間のように感じられ巴はぼーっとしていた。
そして観月の声で呪縛を解かれ、それと同時に巴もまた気づいた。
「あ、観月さんも少し荒れちゃってますね、私が塗ってあげますよ」
「そうですか?ありがとう」
そう言って観月はリップクリームを手渡そうとしたが、
その差し出した手を巴にぐいっと引かれて体勢を崩す。
「……」
巴は自分の唇についたリップクリームを
そのまま観月に移すことにした。
しばらく巴はその作業に没頭する。
最初の一瞬こそ観月も驚いたものの、
巴の腰に手を回して積極的に協力する。
「ところで…ボクは思うんですけどね…」
巴の身体が崩れ落ちそうになるまでクリームを付け合って
身を離すときに観月は呟いた。
「これって、クリームを舐め取りこそすれ
塗り合うことにはならないんじゃないですかね?」
巴は自分のしでかしたことと先ほどの余韻に顔を赤らめながら
観月の言いたい意味に気づく。
なけなしの勇気にツッコミを入れられてはもうどうしようもない。
「あっ…あああそっそうですね…!」
すっかり慌てふためく巴を眺めて、
観月は人の悪い笑みを浮かべる。大胆なことをやっておきながらも
些細なツッコミですっかりうろたえる彼女を
とても可愛いと思いながら。
「なんなら、もう一度“おとなしめ”にやってみましょうか?
今度こそちゃんと付くかもしれませんよ?
━━━もっとも、何度もしていれば
もうクリームもいらないくらい潤うでしょうけどね?」
END
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