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ネクタイをきゅっと結ぶ。…結んだつもり。
初めて結ぶからよれよれ。何とか形にはなったけど。
たかがネクタイを結ぶだけで30分もかかってしまい、
既に寮を出るタイムリミット寸前だ。もう一度自分の姿を鏡に映して確認。
初めて着る聖ルドルフ学院の制服。糊が目一杯利いていてまだぎこちないカンジ。

「やばっ!早く出なくちゃ観月さん待たせちゃう!」



   *甘いアナタ



ふと我に返って慌てて朝食も取らずに寮を飛び出す。
登校初日から全力疾走とは先が思いやられるなあ。
そう、今日が始業式。
去年中学生になったばかりだというのに、また再び新入生。
そんなわけで、色々手続きをやらねばならず
今日は早川さんや他の寮生よりも早く登校しないといけなくて。
ただ先日、その事を観月さんに伝えると、

「私が推薦をした以上、責任を持って学校までお送りしますよ。
━━━いきなり迷子になっても困りますし」

と、相変わらず心配性のお母さんのような物言いで
学校まで送ってもらうことが決定した。
しかし、いきなり迷子って…。
ふだん観月さんが私のことをどう思っているのかよくわかるね。とほほ。
心配している事も同時によくわかってその点だけは嬉しいんだけど。


待ち合わせの最寄り駅に着くと当然の事ながら、観月さんが待っていた。

「やっぱり走ってくると思いましたよ」

あきれ顔で、呼吸を整える私を見ている。
もしかしてこんな事まで計算通りですか…。
段々呼吸が整ってきてふと顔を上げた私の前に白い袋が差し出された。

「何ですか?これ?」

「……あなたは初日から朝ご飯抜きで登校するつもりですか」

袋を開くとコンビニおにぎり2個とお茶のペットボトル。
わあ、観月さんちゃんとわかっていらっしゃる!
…って、ここまでバレバレですか!
そんなに私って分かり易いのかなあ。

「さ、電車が来るまであと5分しか有りませんよ、早く食べて」

やっぱり観月さんはお母さんみたいだ。
多分本人に言うとムッとした表情で「やめてください」って言うんだけど。
そのあと「ちゃんと異性として好意を抱いてますよ」って伝えると
大抵普段見せない、何のたくらみもなさそうな笑顔を私には見せてくれるから
そして「私もですよ」ってぎゅっとしてくれるだろうから。
やっぱり、言っちゃおうか。

「観月さんて、お母さんみたいですよね?」

結局、朝ご飯を食べるタイミングは逃しちゃったみたい。


END
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