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本文なし
「やっぱりさー、この水着無理アリ過ぎじゃない?
大体海でイケメンゲットー、なんて私たちまだ中一だよ。
こんな水着さあ、いくら試着はタダだって言っても…聞いてる、朋ちゃん?」
岐阜には海がない。
だから、東京に来てはじめて行く海が生まれて初めての海になる予定。
その話を聞いた朋ちゃんは「じゃあ、まずは形からね!」とデパートの水着売り場まで私を引っ張ってきた。
私も女子の端くれ、気乗りせずついてきたもののやっぱりデパートで身に着けるものを選ぶとなるとやっぱり楽しい。
色とりどりの水着は、私には大人すぎるものもあるけれど選び放題だ。
一緒にやってきた那美ちゃんや桜乃ちゃんと、わいわいとにぎやかに選んでいた。
そして、「せっかくだからアンタ色々試着してみなよ!着るだけならタダなんだし」と朋ちゃんセレクトの水着を押しつけられてずらりと並ぶ特設の試着室の中に押し込められた。
そして、今、こうやってぶつぶつ言いながら試着をしている。
もちろん着るのは楽しい。
毎日部活に明け暮れているせいで半袖焼けや靴下焼けが気になるところだけど、それでも身体は引き締まっていて自分でいうのもなんだけど無駄がない。
必要な部分も多少足りなくはあるけれど、それはこの先に期待してる。
そんなわけで、水着を着るには支障ないどころかなかなかイケてるんじゃないかな。
鏡の前でひとつポーズを作ってみる。
いま身に着けているスカイブルーの水着はいかにもビキニでございますと言わんばかりに、私の身体に張り付いていていささか気恥ずかしいものがある。
さすが朋ちゃんセレクトだけあって、良い色だとは思うけどちょっと大胆じゃないかなあ。
先ほどの私の問いかけに答えない朋ちゃんを疑問に思い、もう一度問いかける。
「ねえ、この水着やっぱりちょっとやりすぎだよねえ。
私いままでスクール水着しか着たことがないんだからね!」
試着室のカーテンをさっと開け、朋ちゃんに話しかけた。
つもりだった。
何故つもりかというと、目の前にいたのは朋ちゃんではなかったからだ。
一瞬目の前が真っ暗になったような気がした。
ここは水着売り場で━━━確かにスポーツ売り場の中の1コーナーだったけど、この人がいまここにいるなんて誰が考えただろう。
聖ルドルフの観月さんが立っていたら誰だって驚く。
いくら、私がこの人と最近親しくしているといっても、さすがに。
私が心臓の弱いお年寄りだったら間違いなく危険だったはず。
驚きとときめきで胸の鼓動は大忙しだ。
「観月さん!?なぜここに?」
隣の男性用水着コーナーにでも用があったにしろ、なにも私の試着室前にいることはない。
カップルで水着を見に来たとかいうんなら納得できるけれども、そんなんじゃないし。
そもそも一緒に来たわけじゃないんだし。
出会って3ヶ月ほどの現在は、まだ。
「奥のテニスコーナーにボクの好きなブランドの新製品が入ったんで見に来たんです。
そうしたらキミの友達に目敏く発見されてここに連れられてきたってワケです。
『急用が出来たから自分たちは帰るのでキミのカバンを預かってくれ』と言われて」
「どうしようもないじゃありませんか」と深くため息をつく観月さんは苦悩の表情だ。
まるでスクールでの練習の時に毎回同じ事を指摘しているような表情。
私に対して呆れているときに見せる表情だ。ヤバイ。
「そ、それはどうもありがとうございます…!
朋ちゃん達どうしたんだろ…あはは」
妙な気の利かせかたをする友人達に恨み半分感謝半分の念を送る。
自分の水着姿を見せたい相手の一人に目の前の人は確かに入っていたからそれは有り難い。
こんな気の利かせかたは勘弁して欲しかったけれど。
「いえ、それは良いのですが、その水着…」
案外あっさりとした表情で、私の姿を観月さんは眺めた。
普段と全く変わらない表情でなんてコトないものを見ているといった風情で。
ノーリアクション!ショック!
「その水着?」
それでも、観月さんの言おうとしている言葉にドキドキしてる。
『似合いますね』?『かわいいですね』?
なんでも良いから何か言って!
「露出度が高いですね、中一なんですから年相応なデザインの方がいいですよ。
第一キミは海に行っても水際で遊ぶ程度で満足できるわけがないでしょう。
そんな水着を着ていては身体がすぐに冷えてしまいますよ」
……こんな時にも説教とは、さすがお母さん属性……。
しかも全く的を射たご意見で反論もない。
がっくりと肩を落とす。そうだよねえ。
でもヤツは女子の身体に興味がないとでも言うのか!
私の身体はそんなにアレなの?
まあ、エロ視線で女子を見る観月はじめというのもちょっと…だけど。
ふーんだ、私にはまだこんな水着は早いってコトですねー。
あ、ちょっと凹んだ。
「でも」
でも?
「さすがキミのお友達が選んだだけ合ってキミによく似合う色ですね。
その色遣いのもうちょっとスポーティーな水着ならきみに合うと思いますよ」
「さ、参考にします!」
話題の中心が水着なだけで、スクールの時と全く変わらないやりとり。
アドヴァイスする観月さんと、それを聞く私。
さすがにこれ以上進展は望めないかなあ。ちぇ。
「さ、それじゃ」
そう言って観月さんは私に朋ちゃんから預かったカバンを手渡してくれた。
もう行っちゃうのかな?それはとっても残念かも。
ていうか、私はホントに朋ちゃん達に置き去りにされちゃったワケ?
あとでメールしてみなきゃ。
「ボクは奥のテニスコーナーで待っていますから、さっさと着替えていらっしゃい。
確か新製品の中にはキミにちょうど良さそうなものもあったはずですから、これを機会に見ておくのも良いでしょう」
「早くしてくださいね」と言いのこして背を向けようとした観月さんを「あのっ!」と呼び止める。
勢いで声が出てしまったので後が続かない。
本当に待っていてくれるのか訊きたかったけれども、何と言っていいかも分からないし。
声に出したらその約束は反故されてしまいそうで恐いし。
「んふっ、友達に置き去りにされてしまったでしょう?
お茶を一緒に飲んで駅まで送るぐらいのことだったらボクだって出来ますよ」
なんて余裕なんだろう、そんなジェントルな言葉を残してそのまま歩いていってしまった。
慌てて追いつくためにカーテンを閉めて水着を脱いだ。
試着室から出て近づいてきた店員に「ごめんなさい!」と水着を押しつけ小走りにテニスコーナーへと向かう。
水着姿にはなんとも思わないけど、それでも私のことは気にかけてくれてるってコトだよね。
まあ、なんだかんだいって嬉しい気持ちが勝つわけだ。
凹み5、嬉しい95くらいで。
スカイブルーのスポーティーな水着は明日にでももう一度探してみよう。
近づいたテニス用品が並ぶコーナーに見慣れた後ろ姿を見つけて胸が高鳴った。
その後のことと言ったら水着のことなんて、もうどうでもよくなるくらいだった。
結局のところ、あれ以来毎年ビキニは却下されつづけている。
「ボク以外の人間の前で必要以上の露出をすることはないでしょう?」って。
「だって、初めてキミのあんな姿を見たとき、この冷静なボクだってどれほど動揺したと思ってるんですか?常人だったらヤバイレベルですよ」って。
いまさらちょっと照れたような表情で言われたってさ。
そんなの、当時の私に言ってあげるべきだったと思うんだけど。
END
「やっぱりさー、この水着無理アリ過ぎじゃない?
大体海でイケメンゲットー、なんて私たちまだ中一だよ。
こんな水着さあ、いくら試着はタダだって言っても…聞いてる、朋ちゃん?」
岐阜には海がない。
だから、東京に来てはじめて行く海が生まれて初めての海になる予定。
その話を聞いた朋ちゃんは「じゃあ、まずは形からね!」とデパートの水着売り場まで私を引っ張ってきた。
私も女子の端くれ、気乗りせずついてきたもののやっぱりデパートで身に着けるものを選ぶとなるとやっぱり楽しい。
色とりどりの水着は、私には大人すぎるものもあるけれど選び放題だ。
一緒にやってきた那美ちゃんや桜乃ちゃんと、わいわいとにぎやかに選んでいた。
そして、「せっかくだからアンタ色々試着してみなよ!着るだけならタダなんだし」と朋ちゃんセレクトの水着を押しつけられてずらりと並ぶ特設の試着室の中に押し込められた。
そして、今、こうやってぶつぶつ言いながら試着をしている。
もちろん着るのは楽しい。
毎日部活に明け暮れているせいで半袖焼けや靴下焼けが気になるところだけど、それでも身体は引き締まっていて自分でいうのもなんだけど無駄がない。
必要な部分も多少足りなくはあるけれど、それはこの先に期待してる。
そんなわけで、水着を着るには支障ないどころかなかなかイケてるんじゃないかな。
鏡の前でひとつポーズを作ってみる。
いま身に着けているスカイブルーの水着はいかにもビキニでございますと言わんばかりに、私の身体に張り付いていていささか気恥ずかしいものがある。
さすが朋ちゃんセレクトだけあって、良い色だとは思うけどちょっと大胆じゃないかなあ。
先ほどの私の問いかけに答えない朋ちゃんを疑問に思い、もう一度問いかける。
「ねえ、この水着やっぱりちょっとやりすぎだよねえ。
私いままでスクール水着しか着たことがないんだからね!」
試着室のカーテンをさっと開け、朋ちゃんに話しかけた。
つもりだった。
何故つもりかというと、目の前にいたのは朋ちゃんではなかったからだ。
一瞬目の前が真っ暗になったような気がした。
ここは水着売り場で━━━確かにスポーツ売り場の中の1コーナーだったけど、この人がいまここにいるなんて誰が考えただろう。
聖ルドルフの観月さんが立っていたら誰だって驚く。
いくら、私がこの人と最近親しくしているといっても、さすがに。
私が心臓の弱いお年寄りだったら間違いなく危険だったはず。
驚きとときめきで胸の鼓動は大忙しだ。
「観月さん!?なぜここに?」
隣の男性用水着コーナーにでも用があったにしろ、なにも私の試着室前にいることはない。
カップルで水着を見に来たとかいうんなら納得できるけれども、そんなんじゃないし。
そもそも一緒に来たわけじゃないんだし。
出会って3ヶ月ほどの現在は、まだ。
「奥のテニスコーナーにボクの好きなブランドの新製品が入ったんで見に来たんです。
そうしたらキミの友達に目敏く発見されてここに連れられてきたってワケです。
『急用が出来たから自分たちは帰るのでキミのカバンを預かってくれ』と言われて」
「どうしようもないじゃありませんか」と深くため息をつく観月さんは苦悩の表情だ。
まるでスクールでの練習の時に毎回同じ事を指摘しているような表情。
私に対して呆れているときに見せる表情だ。ヤバイ。
「そ、それはどうもありがとうございます…!
朋ちゃん達どうしたんだろ…あはは」
妙な気の利かせかたをする友人達に恨み半分感謝半分の念を送る。
自分の水着姿を見せたい相手の一人に目の前の人は確かに入っていたからそれは有り難い。
こんな気の利かせかたは勘弁して欲しかったけれど。
「いえ、それは良いのですが、その水着…」
案外あっさりとした表情で、私の姿を観月さんは眺めた。
普段と全く変わらない表情でなんてコトないものを見ているといった風情で。
ノーリアクション!ショック!
「その水着?」
それでも、観月さんの言おうとしている言葉にドキドキしてる。
『似合いますね』?『かわいいですね』?
なんでも良いから何か言って!
「露出度が高いですね、中一なんですから年相応なデザインの方がいいですよ。
第一キミは海に行っても水際で遊ぶ程度で満足できるわけがないでしょう。
そんな水着を着ていては身体がすぐに冷えてしまいますよ」
……こんな時にも説教とは、さすがお母さん属性……。
しかも全く的を射たご意見で反論もない。
がっくりと肩を落とす。そうだよねえ。
でもヤツは女子の身体に興味がないとでも言うのか!
私の身体はそんなにアレなの?
まあ、エロ視線で女子を見る観月はじめというのもちょっと…だけど。
ふーんだ、私にはまだこんな水着は早いってコトですねー。
あ、ちょっと凹んだ。
「でも」
でも?
「さすがキミのお友達が選んだだけ合ってキミによく似合う色ですね。
その色遣いのもうちょっとスポーティーな水着ならきみに合うと思いますよ」
「さ、参考にします!」
話題の中心が水着なだけで、スクールの時と全く変わらないやりとり。
アドヴァイスする観月さんと、それを聞く私。
さすがにこれ以上進展は望めないかなあ。ちぇ。
「さ、それじゃ」
そう言って観月さんは私に朋ちゃんから預かったカバンを手渡してくれた。
もう行っちゃうのかな?それはとっても残念かも。
ていうか、私はホントに朋ちゃん達に置き去りにされちゃったワケ?
あとでメールしてみなきゃ。
「ボクは奥のテニスコーナーで待っていますから、さっさと着替えていらっしゃい。
確か新製品の中にはキミにちょうど良さそうなものもあったはずですから、これを機会に見ておくのも良いでしょう」
「早くしてくださいね」と言いのこして背を向けようとした観月さんを「あのっ!」と呼び止める。
勢いで声が出てしまったので後が続かない。
本当に待っていてくれるのか訊きたかったけれども、何と言っていいかも分からないし。
声に出したらその約束は反故されてしまいそうで恐いし。
「んふっ、友達に置き去りにされてしまったでしょう?
お茶を一緒に飲んで駅まで送るぐらいのことだったらボクだって出来ますよ」
なんて余裕なんだろう、そんなジェントルな言葉を残してそのまま歩いていってしまった。
慌てて追いつくためにカーテンを閉めて水着を脱いだ。
試着室から出て近づいてきた店員に「ごめんなさい!」と水着を押しつけ小走りにテニスコーナーへと向かう。
水着姿にはなんとも思わないけど、それでも私のことは気にかけてくれてるってコトだよね。
まあ、なんだかんだいって嬉しい気持ちが勝つわけだ。
凹み5、嬉しい95くらいで。
スカイブルーのスポーティーな水着は明日にでももう一度探してみよう。
近づいたテニス用品が並ぶコーナーに見慣れた後ろ姿を見つけて胸が高鳴った。
その後のことと言ったら水着のことなんて、もうどうでもよくなるくらいだった。
結局のところ、あれ以来毎年ビキニは却下されつづけている。
「ボク以外の人間の前で必要以上の露出をすることはないでしょう?」って。
「だって、初めてキミのあんな姿を見たとき、この冷静なボクだってどれほど動揺したと思ってるんですか?常人だったらヤバイレベルですよ」って。
いまさらちょっと照れたような表情で言われたってさ。
そんなの、当時の私に言ってあげるべきだったと思うんだけど。
END
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