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片想いのクリスマス。
***
平静な顔を装って帰宅して、自室に入るなり器用にも顔色を変えた。
人間がここまで赤くなれることなんて滅多にないくらいに。
「なんだったんだろう……今日のアレ」
ルドルフのテニス部員に混じってクリスマス会に参加して。
観月さんの隣に座って、プレゼント交換は観月さんからのものがまわってきて。
一緒に帰って、雪を見て。
ルドルフに転校しないかと誘われた。
うそみたい。
後ろ手に閉めたドアにもたれ掛かり、ぎゅっと頬をつねってみる。
「いったあっい!」
どうやら現実世界の住人らしい。
自分でつねって赤く晴れたヒリヒリする頬をそっとなでて、
その痛みでしかめられた表情は一転して微笑みに変わった。
微笑み、というよりもニヤケ顔と言ったほうがいいのかも。
とにかくまともな表情でいられなかった。
人をまるで自分の持ち駒のように扱う彼が優しくしてくれて、
おまけに自分の元へ来いだなんて言うなんて。
それはなんて愛の告白にも似た甘い言葉だろうか。
もちろん、出会ってから数か月で彼の性格は学んだつもり。
決して一筋縄ではいかない。
転校のことにしたって、自分を都合のよい持ち駒にするための方便にしかすぎないかもしれない。
そんなことは誘われたその場でわかってはいたけど、それでも嬉しい。
単純バカだと謗られたとしてもそんなことはどうでもいいんだよね。
要は、彼がどんな理由であれ自分を欲しているか欲していないか。
それだけのことが重要で。
彼の本心なんて、実際のところどうだっていい。
いまは、なんとしても彼の隣に居座って近い距離をキープしたい。
恋人だとか、パートナーだとか、そんなもの今は気にしない。
そんなものは後からいくらだってついてくる。
つけてみせる。
「あ、ケータイ……?」
不意にブルブルと携帯電話が震えだした。
慌てて開くと、『良い返事、待ってますよ』とだけのメッセージ。
それだけのメッセージなのに、やはり嬉しくて。
思わず保護メールに設定してしまう。
作業を終えて携帯電話を閉じた瞬間に、また再び震え始めた。
『言い忘れてました、おやすみなさい。良い夢を』
こんな日に、良い夢以外見られるはずないと思いながら、これもまた保護。
なんで観月さんはこんなに私を舞い上がらせるようなことばかりするんだろう。
よくわからないけど。
「ヤバい、嬉しすぎる」
今度は先ほどつねった頬とは反対側の頬をつねってみる。
やっぱり痛い。
両頬がヒリヒリすることに安心した。
ちょっとマゾっぽくもある。
「しまった……眠れないかも」
両頬の痛みによる意識の覚醒と、
今日起こった事による精神的な興奮で
観月さんの言うところの『良い夢』が見られないかもしれない。
ルドルフに転校を決める事への心細さとか、観月さんに心を委ねる不安とか。
そんなことより、いま眠れないことが何よりも大問題に思える。
良い夢って絶対観月さんの夢のはずなのに。
見られないと困るじゃない。
幸せなところに大きな落とし穴がひとつ。
END
***
平静な顔を装って帰宅して、自室に入るなり器用にも顔色を変えた。
人間がここまで赤くなれることなんて滅多にないくらいに。
「なんだったんだろう……今日のアレ」
ルドルフのテニス部員に混じってクリスマス会に参加して。
観月さんの隣に座って、プレゼント交換は観月さんからのものがまわってきて。
一緒に帰って、雪を見て。
ルドルフに転校しないかと誘われた。
うそみたい。
後ろ手に閉めたドアにもたれ掛かり、ぎゅっと頬をつねってみる。
「いったあっい!」
どうやら現実世界の住人らしい。
自分でつねって赤く晴れたヒリヒリする頬をそっとなでて、
その痛みでしかめられた表情は一転して微笑みに変わった。
微笑み、というよりもニヤケ顔と言ったほうがいいのかも。
とにかくまともな表情でいられなかった。
人をまるで自分の持ち駒のように扱う彼が優しくしてくれて、
おまけに自分の元へ来いだなんて言うなんて。
それはなんて愛の告白にも似た甘い言葉だろうか。
もちろん、出会ってから数か月で彼の性格は学んだつもり。
決して一筋縄ではいかない。
転校のことにしたって、自分を都合のよい持ち駒にするための方便にしかすぎないかもしれない。
そんなことは誘われたその場でわかってはいたけど、それでも嬉しい。
単純バカだと謗られたとしてもそんなことはどうでもいいんだよね。
要は、彼がどんな理由であれ自分を欲しているか欲していないか。
それだけのことが重要で。
彼の本心なんて、実際のところどうだっていい。
いまは、なんとしても彼の隣に居座って近い距離をキープしたい。
恋人だとか、パートナーだとか、そんなもの今は気にしない。
そんなものは後からいくらだってついてくる。
つけてみせる。
「あ、ケータイ……?」
不意にブルブルと携帯電話が震えだした。
慌てて開くと、『良い返事、待ってますよ』とだけのメッセージ。
それだけのメッセージなのに、やはり嬉しくて。
思わず保護メールに設定してしまう。
作業を終えて携帯電話を閉じた瞬間に、また再び震え始めた。
『言い忘れてました、おやすみなさい。良い夢を』
こんな日に、良い夢以外見られるはずないと思いながら、これもまた保護。
なんで観月さんはこんなに私を舞い上がらせるようなことばかりするんだろう。
よくわからないけど。
「ヤバい、嬉しすぎる」
今度は先ほどつねった頬とは反対側の頬をつねってみる。
やっぱり痛い。
両頬がヒリヒリすることに安心した。
ちょっとマゾっぽくもある。
「しまった……眠れないかも」
両頬の痛みによる意識の覚醒と、
今日起こった事による精神的な興奮で
観月さんの言うところの『良い夢』が見られないかもしれない。
ルドルフに転校を決める事への心細さとか、観月さんに心を委ねる不安とか。
そんなことより、いま眠れないことが何よりも大問題に思える。
良い夢って絶対観月さんの夢のはずなのに。
見られないと困るじゃない。
幸せなところに大きな落とし穴がひとつ。
END
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