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- 昔書いていた36話(友情系)の転載です。
- 特に加筆修正は行ってません。
- 菊不二前提で書いていたような気がする。
- 巴は出てきません。
- 初出:2003年
***
快晴の本日もやっと練習が終わった。
部長不在のテニス部といえども練習は変わらずハードなもので
皆汗で身体が不快に湿っている。
部員達はそれぞれ早く着替えようと部室に急いだり
水道で頭から水をかぶったりして不快さから逃れようとしている。
「いやー!あっついねー!」
そう言って、たっぷりと水を貯めたテニス部備品のバケツを頭上に掲げた菊丸英二は、
目の前にいるクラスメイト不二周助にその水をぶちまけた。
周囲からは部員達の悲鳴(不二先輩にそんな事して怖ろしい!と言った声)や
はやし立てる声(いいぞー!もっとー!と言った声)があがる中
「…英二?言ってる事とやってる事に矛盾があると思うんだけど?」
きわめて冷静に言葉を紡ぐ不二。
しかしその声色には怒りなどといったものはなく
ただ自分の身に降りかかった事に対して呆気にとられているようだ。
夏の最中の屋外での練習で、既に滝のような汗を流した後では
思考能力に衰えがあるのも確かなら、
今更頭から水をかぶったところでさほど変わらないのも確か。
怒りを覚えるのも馬鹿馬鹿しく暑苦しい行為だ。
「でも、涼しくなったっしょ?不二?」
そういって小首をかしげる菊丸は
相も変わらず汗をだらだらと流し続けている。
暑い中、運動したあとであればバケツ一杯の水を持ち上げるのさえ
重労働になりうる。
だからそこまでして何がしたいのか、不二にはさっぱりだ。
「まあね、僕は涼しくなったけどね、
でも僕がびしょぬれになったところで君が涼しくなるわけじゃないよ?」
「ん?そうでもないよ」
そう言い終わらないうちに菊丸は不二の身体に絡みつく。
「えへへー♪コレで涼しくなるもんねー!」
水で汗ごと加熱した体温を流した不二の身体は少しひんやりして気持ちが良い。
周囲が炎天下というのは変わらないので、それは一瞬ではあるけれど。
「ねぇ、英二は涼しくなるかもしれないけどさ、僕は熱くなることに気づいてる?」
初めは呆れモードのままだったものの、
英二に抱きつかれたことに寄る体温の上昇には少し眉を寄せる。
英二は好き。
英二が抱きつき、寄せられてくる体重も心地良い。
でも、火照ったままの英二の体温と、外気による、
自分にまとわりついた水温の上昇は不快だ。
「離れてよ、英…」
そう言い終わらぬところに、突然、今度は頭上からと言わず様々な角度から水が。
ぐるりと周囲を見渡すと大石や乾たちレギュラー陣達がバケツを持って立っていた。
(ちなみに1年生トリオはバケツリレーで水を届けている)
「……どういう事?英二にでも頼まれたの?」
まさか、そんなわけは無いだろう。でもどうして?全く分からない。
しかし、菊丸は「もっと!もっと!」と急かしている。
やれやれと言った表情でもう一度二人に水をかけ、
周囲の人間たちはこう説明する。
「見ているだけでお前達は暑苦しいんだよ。周囲の人間の体温上昇する確率95%」
「そうッスよ!先輩達どっか涼しいところでやってくださいよ!」
そういった言葉を次々と口にするもの達の最後に
菊丸の、また部員達のもっとも信頼するところの大石副部長は
その暑さ知らずのさわやかな笑顔でこう言葉を添えた。
「さあ、次は英二と不二がみんなに水をかける番だからな。しっかりよろしくな!
筋トレだと思ってがんばれよ!」
結局その後びしょびしょになって涼を楽しむレギュラー陣を尻目に
不二と菊丸の体温が低下する事はなかった。
寧ろまた汗が身体に張り付いた水分を洗い流す結果となった。
しかし、その後、帰り道の途中で英二だけは
「これって…僕の巻き込まれ損って事だよね…?誰のせいかな?英二?」
と言う一言を不二から浴びせかけられて非常に涼しい気分になったという。
END
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