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本文なし
『heat up』
夏の厳しい日差しに負けず伊武深司と赤月巴は河川敷のテニスコートにて元気に打ち合う。
もちろん身体は汗だくで爽やかとは逆方向にある。
しかし、普段から言動も見た目もクールな伊武は
今日も涼しげに見える。
ワンセットプレイし終わって、ドロドロに疲れた二人は
かろうじて、申し訳程度に出来ていた小さな日陰に入り
わずかながらの涼と休息を取ることにした。
あまりにも小さい陰で、二人も入ると身体を寄せ合う格好で
キツキツに座っているしかないのだが、
それでも日向と日陰では全くちがうし、
二人ともくっついて座ることは不快ではない。
むしろ、伊武などは内心ラッキーだとすら思っている。
隣に座る相手が相手なのだから当然なのだが。
「はあ~~~~。やっぱりあっついですねえ!深司さん」
「最初から分かってたと思うけど?
……(ボソ)だけど、絶対やるって言ったのはキミの方だよね、
それに黙って付き合ってあげてる俺って凄くイイヤツなんだよね?
それなのに言い出しっぺがあついあついってさ…どうなの?ソレ?」
「……聞こえてるんですけど……」
巴はジトっとした目でついつい伊武を見てしまう。
出会ってからもう1年以上経ち、今ではさらりと流してしまえるが
今日は暑いからうっかり聞き咎めてしまった。
そしてふと、あることに気づいた。
好奇心を隠さず、そのままジッと伊武を見つめる。
「あれ…?こんなに蒸し暑いのに深司さん涼しげですよねえ」
いいなーといった顔で隣の伊武をしみじみと見つめる。
伊武は巴に見つめられて、
正面はクールなままだが内心は動揺を隠せない。
こんな性分で良かったなとチラリと思う。
神尾アキラじゃないんだから、
女子が隣で自分を見つめていると言うだけで
ドキドキしてたりしては格好悪い。
「ふーん。
……(ボソ)でも俺だって人間なんだから
体感温度はキミと変わらないけど。
もしかして俺を人間扱いしてないの?ソレってちょっと酷くない?」
ただ俺がクール系の顔立ちだから涼しげに見えるだけでしょ。
そうだと伊武は思うのだが、まだ巴は不思議そうにしている。
「だから、聞こえてますって…こんなに近い位置に居るんですから。
━━━あっ!わかった」
そして突如伊武に向かって手を伸ばす。
伊武は少し驚くがそのまま巴の行動を窺う。
巴の手が伸びて来る。
鳴き続ける蝉の声だけが響く。
厳しすぎる強い光が周囲を白くかき消す。
まるで世界に二人しかいなくなったかのように空虚な時間が流れる。
実際のところ時間にしては一瞬のことだけれども、永遠にも思えた。
何故そうなるのかは分からないが、
巴は自分の髪を撫でているようだと
伊武が気づくには少し時間がかかってしまった。
その行動根拠がよく分からない。
理解できないから頭の中が真っ白になった。
そして気づいた時にはもう手が髪から離れていた。
その手の感触が名残惜しい。
「分かりましたよー。その黒い髪がサラッサラだからです。
あーもう、深司さん、イイなー!その髪質!」
やっぱりその思考回路は分からないなあと思いつつ
伊武は巴を呆然と見ている。
「なんでいいの?
流石にキューティクルのケアまではそんなに気にしてないけど?」
「気にしてないとか言われるとちょっとムカつく!
深司さん、男子でケアもしてないのに柔らかくてサラサラなのかあ。本当に羨ましいなあ…」
ちょっとムカつくとまで言われ少し傷ついたが
返す言葉も見つからないのでそのまま黙って巴の言葉の続きを聞く。
巴はしきりに伊武の髪を見つめている。
「ああマジでイイなあ…。
深司さんに比べて私なんて、固くて太めの髪で…。
結べば朋ちゃんなんかに「注連縄!」とか言われるし…あーあ」
しかし案外伊武は巴の長い髪は好きだったので
軽く「朋ちゃん」に殺意を抱く。
コレが原因で巴が髪を切るようなことがあったらシメようと思った。
しかも彼女はその言葉でヘコみ気味のようであるし。
伊武はまるでそうするのが自然なように、
今度は逆に自分が巴の髪を撫でる。
「キミの髪、俺は好きだけどね」
そしてそのまま手を毛先まで滑らせ一房自らの指に巻き付ける。
ビックリした表情で見つめる巴を、
伊武もまた見つめながら、巻き付けた髪を口元に持っていき口づける。
「でもキミが俺の髪がいいって言うんなら、キミも口づけていいよ。
……(ボソ)でも俺はもっと他のところにして欲しいけどね」
元から暑さで紅潮している巴の身体はますます紅く染まる。
「……だから、それも聞こえてますってば!」
だいたい、涼みに来たはずなのにますます暑くさせるなんて
深司さん反則だよ、と巴は思った。
もっとも、同じく伊武もますます暑くなっていたのだが。
END
『heat up』
夏の厳しい日差しに負けず伊武深司と赤月巴は河川敷のテニスコートにて元気に打ち合う。
もちろん身体は汗だくで爽やかとは逆方向にある。
しかし、普段から言動も見た目もクールな伊武は
今日も涼しげに見える。
ワンセットプレイし終わって、ドロドロに疲れた二人は
かろうじて、申し訳程度に出来ていた小さな日陰に入り
わずかながらの涼と休息を取ることにした。
あまりにも小さい陰で、二人も入ると身体を寄せ合う格好で
キツキツに座っているしかないのだが、
それでも日向と日陰では全くちがうし、
二人ともくっついて座ることは不快ではない。
むしろ、伊武などは内心ラッキーだとすら思っている。
隣に座る相手が相手なのだから当然なのだが。
「はあ~~~~。やっぱりあっついですねえ!深司さん」
「最初から分かってたと思うけど?
……(ボソ)だけど、絶対やるって言ったのはキミの方だよね、
それに黙って付き合ってあげてる俺って凄くイイヤツなんだよね?
それなのに言い出しっぺがあついあついってさ…どうなの?ソレ?」
「……聞こえてるんですけど……」
巴はジトっとした目でついつい伊武を見てしまう。
出会ってからもう1年以上経ち、今ではさらりと流してしまえるが
今日は暑いからうっかり聞き咎めてしまった。
そしてふと、あることに気づいた。
好奇心を隠さず、そのままジッと伊武を見つめる。
「あれ…?こんなに蒸し暑いのに深司さん涼しげですよねえ」
いいなーといった顔で隣の伊武をしみじみと見つめる。
伊武は巴に見つめられて、
正面はクールなままだが内心は動揺を隠せない。
こんな性分で良かったなとチラリと思う。
神尾アキラじゃないんだから、
女子が隣で自分を見つめていると言うだけで
ドキドキしてたりしては格好悪い。
「ふーん。
……(ボソ)でも俺だって人間なんだから
体感温度はキミと変わらないけど。
もしかして俺を人間扱いしてないの?ソレってちょっと酷くない?」
ただ俺がクール系の顔立ちだから涼しげに見えるだけでしょ。
そうだと伊武は思うのだが、まだ巴は不思議そうにしている。
「だから、聞こえてますって…こんなに近い位置に居るんですから。
━━━あっ!わかった」
そして突如伊武に向かって手を伸ばす。
伊武は少し驚くがそのまま巴の行動を窺う。
巴の手が伸びて来る。
鳴き続ける蝉の声だけが響く。
厳しすぎる強い光が周囲を白くかき消す。
まるで世界に二人しかいなくなったかのように空虚な時間が流れる。
実際のところ時間にしては一瞬のことだけれども、永遠にも思えた。
何故そうなるのかは分からないが、
巴は自分の髪を撫でているようだと
伊武が気づくには少し時間がかかってしまった。
その行動根拠がよく分からない。
理解できないから頭の中が真っ白になった。
そして気づいた時にはもう手が髪から離れていた。
その手の感触が名残惜しい。
「分かりましたよー。その黒い髪がサラッサラだからです。
あーもう、深司さん、イイなー!その髪質!」
やっぱりその思考回路は分からないなあと思いつつ
伊武は巴を呆然と見ている。
「なんでいいの?
流石にキューティクルのケアまではそんなに気にしてないけど?」
「気にしてないとか言われるとちょっとムカつく!
深司さん、男子でケアもしてないのに柔らかくてサラサラなのかあ。本当に羨ましいなあ…」
ちょっとムカつくとまで言われ少し傷ついたが
返す言葉も見つからないのでそのまま黙って巴の言葉の続きを聞く。
巴はしきりに伊武の髪を見つめている。
「ああマジでイイなあ…。
深司さんに比べて私なんて、固くて太めの髪で…。
結べば朋ちゃんなんかに「注連縄!」とか言われるし…あーあ」
しかし案外伊武は巴の長い髪は好きだったので
軽く「朋ちゃん」に殺意を抱く。
コレが原因で巴が髪を切るようなことがあったらシメようと思った。
しかも彼女はその言葉でヘコみ気味のようであるし。
伊武はまるでそうするのが自然なように、
今度は逆に自分が巴の髪を撫でる。
「キミの髪、俺は好きだけどね」
そしてそのまま手を毛先まで滑らせ一房自らの指に巻き付ける。
ビックリした表情で見つめる巴を、
伊武もまた見つめながら、巻き付けた髪を口元に持っていき口づける。
「でもキミが俺の髪がいいって言うんなら、キミも口づけていいよ。
……(ボソ)でも俺はもっと他のところにして欲しいけどね」
元から暑さで紅潮している巴の身体はますます紅く染まる。
「……だから、それも聞こえてますってば!」
だいたい、涼みに来たはずなのにますます暑くさせるなんて
深司さん反則だよ、と巴は思った。
もっとも、同じく伊武もますます暑くなっていたのだが。
END
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